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DESTINY BREAKER 一章 3

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一日の授業が終わりを告げ、地面を包み込むように薄く積もった雪の上を生徒たちが歩いていく。桜花は教室の窓からその様子を見下ろし、人の足跡によって白い大地の上に作られた校門までの茶色い一本道を何も考えずに見つめていた。
ただ、その一本道も刹那的なものであっという間に運動部の連中が何本も道を増やしてしまった。この程度の雪ならばいつもどおり活動するようだ。
「もったいないな」とため息混じりに呟くと桜花は視線を教室の中に向けた。
教室に残っている生徒は自分を含めても五人程度、最近はなにかと物騒だし終礼の挨拶からそれなりに時間もたっているので遅くならないうちに帰ろうと重い腰を持ち上げた。
「さようなら。千条さん。」
「またね。桜花さん。」
「ごきげんよう。桜花様。」
など友人からの別れの挨拶に軽く手を振り、桜花は教室を後にした。


「そういえば一人で帰るのも久しぶりだなあ。」
桜花は下駄箱に到着して、そう感じたことを自分でも無意識に言葉に出していた。
入学したての頃は、高校が自宅のある巫治町(ふじまち)の隣町である竜牙町(たつがちょう)という場所にあり、家までの距離が他の生徒と比べて遠いため同じ中学だった人が夏樹しかいなかった桜花はいつも夏樹と二人で登下校をしていた。しかし今日は夏樹の所属する委員会で緊急の招集がかけられたらしく、本人は帰ろうとしていたが顧問の先生に引きずられていった。
夏樹は(それはもう)必死に一緒に帰りたいと嘆いていたが、委員会の会議には少し時間がかかってしまうらしく、夏樹の話だけではないが世の中何かと物騒である。一緒の方向の人はみんな部活動に出ていて、夏樹は顧問の先生が遅くなるようなら家まで車で送ってくれると言っていた。冬の太陽は眠るのが早い。自分は夕飯の買い物などもあるため明るいうちに一人で帰ろうと思ったのである。
「さて、どこで買い物しようかな。確か醤油もきれかかっているし…。」
考えながら靴を取り出そうとロッカーの扉を開けると手紙や小さな小包が溢れてきた。
『調理実習で作りました。迷惑かもしれませんがもらってください』
『みんなでマフラーや手袋などを編んでみました。使ってくださると嬉しいです』
『一目見たときから、お姉様のことしか考えられません』
そのまま文末に目線を泳がせると
『三年H組 清水奈々他』
『二年A組 山瀬千鶴他』
作品名:DESTINY BREAKER 一章 3 作家名:翡翠翠