おちていく…
ねぇ?
愛子は、腕枕をする矢田の横顔を見た。
んん?
愛子の視線に気付き、矢田も愛子を見る。
「別れたいの…」
愛子の一言で、穏やかだった矢田の顔がみるみるうちに豹変する。
「何を言っているんだ、急に?そんなふざけたことを…」
矢田は愛子が悪ふざけで言ったものだと信じ、鼻で笑った。
「本気よ…」
愛子は目をそらすことなく、矢田を見つめた。
「ふざけるなっ!」
矢田の怒鳴り声。
と同時に、起き上がるなり愛子の首を絞めた。
くぅっ……
矢田に首を絞められた愛子は、まさかの矢田の行動に目を見開き矢田の顔を見つめた。
別れられるなら、殺されてもいい。
一瞬、そう思ってはみたけれど、人生こんなあっけなく終わってしまうのも、なんかイヤな気がした。
愛子は薄れる意識の中、昔優しかった矢田の顔を思い出してみる。
けれど、矢田の優しかった顔はもう思い出せなかった。
この狂気的な顔の矢田が、過去の想い出達をすべて葬りさせたのだから。