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甜茶no言葉遊びし短編(したい)ね

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【神無月】

「どうせ、神様なんて私に味方してくれないわよ」
「まあ出雲の国に行っちゃってるっていうけど、神様が居るって思ってるほうが問題よ」
「だってとても楽しみにしていたんだもん。チケットが販売開始になったから、すぐに
申し込んだのに、完売だなんて」
涙混じりに悔しがる友人に慰めの言葉をかけてあげたかった。
「最後まで諦めずにチケットのキャンセル待ちやダフ屋だって一緒に見つけてあげるわよ」
「ありがとう。持つべきものは友だちね。もう神頼みなんていないわ」
友人のいうソレは西暦1999年までは悪魔教教祖として組織「聖飢魔?」によって悪魔教布教活動を行っていた「デーモン閣下」のソロコンサート。
『悪魔のことを神様は叶えてはくれないよ』


【霜月】

今年は紅葉の時期が遅いと言われつつも、山々も色づき始めた。
趣味で始めた写真撮影。
とはいえ、被写体はもっぱら自然だ。
人物も撮った覚えはある。大切な女性だった。
あの日、新しく買い換えた一眼レフのカメラでその女性を撮影した。
喜ばせたくて、本音はその性能を確かめたくて、すぐに現像した。
ソレを手渡した時の事は忘れられない。
数秒じっと見つめていた。それから私を見た彼女は笑っていなかった。
「これ、わたし?」
「どう?」
「うん、綺麗ね、このもみじ。でもお見合い写真にもならないわ。私こんなにブスだったんだ。もう貴方にファインダーからも直接も見られたくない」
衝撃的な最後の台詞。
あれから趣味とはいえ、勉強した。
もうそんな痛みもすっかり、いやほとんど、いやちょっとは薄らいだが、人物を撮る事はまだできない。もう撮る気もないといったところだ。
私が撮影に夢中になっていると、いつの間にか小さな女の子が横で落ち葉を拾っていた。
真っ赤に色づいたもみじの葉。少し色むらになっている葉を細い指先で摘んで私に差し出した。女の子の掌は持っている葉のように可愛かった。
「人物じゃなきゃいいか」
私は、その手をカメラに収めた。
「はい・・・はい」
「くれるの?」
女の子が頷く。私がもみじの葉を受け取ると、満面の笑みを浮かべて走って行った。
その女の子を連れたご夫婦と会った。
お互いに俯きかげんに通り過ぎようとした時、ふと見た横顔は忘れもしない。
思わず、ファインダーを覗いてその女性を見た。
周りの紅葉など背景でしかないほどその笑顔が美しかった。
『幸せになったんだね』


【師走】

「どうして、この月だけ『月』が付かなかったのかな?」
「さあ、とにかく忙しかったんじゃないの。弥生だって付かないよ」
「あーそっか」
暫く指を折っては伸ばしたり、ぶつぶつと何やら考え中の女友だちをほおっておいて
他の友人とクリスマスの過ごし方を話していた。
「分かった」
「何よ急に。びっくりさせないでよ」
「ごめん。あ、さっきの『弥生と師走』これには深―い意味があると思うの」
「まだ考えてたの?いいわ聞いてあげるから」
女は、目の前のグラスの水をグッと飲み込むと、ううんと咳払いをして話し始めた。
「昔は、桃の節句の頃が、気持ちが和らぐ頃だったのね。少し浮かれて、まあそのぉーそうなっちゃうわけよ」
「何よ。まあわかるからいいわ」
「その時が弥生、つまり生命の誕生ってことね。それから三月31日、30、31、30、 31、31、30、31、30、31と来るわけで十月十日(とつきとおか)通常280
日で出産になるわけよ。だから早くも遅くも十二月にはその日が来るわけで、産婆さん、まあその道の師匠ね。が、あっちやらこっちに走ることになる。というわけから、カレンダーもなく、学ぶことだってできなかった女たちに、『弥生に授かったら師走に生まれるわよ』ってわかるようにそうなった・・・と思うんだ」
「なるほど。でクリスマスはどうするの?」
これが女友だちというものか。聞いてくれていたかと思えば、すぐに気が移る。

『季節が移る』

そして、年末の歌番組を聴いて 熱々のカップ蕎麦をすすりながら 行く年と来る年の除夜の鐘に乙女心は願う。
『今年もありがとう。来年も、いや来年こそは成し遂げたい』