甜茶no言葉遊びし短編(したい)ね
【睦月】
新しい年を迎えた。
街には、このときばかりはおしとやかにと晴れ着の女子が溢れ、
その横には、角帯が腰に止まらないほど細めの男子。
ましてその手には、女子のバッグを提げている。
初詣。
本殿前までの行列に並び、僅かばかりの賽銭を投げて
でっかいお願い事を拝む。
境内のおみくじを引いて縄に奉納する。
そして・・・
女子は、お守りを買った。
『縁結び成就』
【如月】
「今日は、お父さんが鬼ね」
炒った豆を升に盛って、勤めから帰ってくる父を待つ。
「ただいま」
エイ!エイ!
「鬼はー外。福はー内」
小粒とはいえ、小さな手に握られた豆を思いっきりぶつけられては逃げ出したくなる。
「ほらほら、もうおしまい」
しばらくしても戻らない夫を心配しながらも朝を迎えた妻。
朝日が照らすカーテンを開けた。
庭の犬小屋で愛犬ぽちを抱きしめて眠っている夫を見つけた。
『あら、いい別荘ね』
【弥生】
「今日、お友だち呼んでもいい」
「いいけど・・・」
「毎年楽しみなのよね。じゃあ帰る頃、電話するね」
ひなまつりの歌を鼻歌混じりに歌いながら出かける娘。
母はちらし寿司の用意をし、もう甘くない酒を用意した。
「どうぞ、いらっしゃい」
「お邪魔しますー」
玄関には、何足ものブーツが散乱した。
少し鼻の欠けた三人官女。染み付き十二単の女雛。
五人囃子の太鼓のバチが片方爪楊枝。
毎年のお座敷で今年もその笑みを変えずに並んでいる。
「でさぁー」
娘たちの愉しげな会話や笑い声にも笑えずにいる母。
来年からは・・・
『女子会まつり』
作品名:甜茶no言葉遊びし短編(したい)ね 作家名:甜茶