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University to GUARD 序章

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 五十嵐のアーマノイドが解除され、両腕のデバイスに吸い込まれていく。
「まさかあんたのような野蛮人が素粒子論を修めてるなんてね。A.C.の対消滅を加速させて瞬間出力を跳ね上げるなんて、自殺行為もいいとこだわ。おかげであの瞬間加速なんでしょうけど」
 一体何が起こったのか。五十嵐が中腰になった刹那、女の眼前に、天へ向かって強烈な発光が起こり、そのまま発光の軌跡を示すかのように蒸気が線となった軌跡から湧き出ていた。そして、地に手をつけた五十嵐だったのだ。
「何をした」
「言ったでしょ?神の眼を見せてあげるって。まぁ、犬にはわからないわね。さっさとアリーナから出て行きなさい」
 アリーナ入場口からスーツを着た男が二人入場し、新藤と五十嵐をそれぞれアリーナから運び出した。
 観客席では新入生達が口ぐちに女の神の眼について議論を起こしている。アリーナの競技場内には女一人になった。
「unistalltion」
 先の新藤、五十嵐時の電子音と違い女自らがデバイスの解除を行った。見る見るうちにアーマノイドが解除され、女の制服姿が露わになっていく。観客席にはいつの間にか議論が掻き消え、皆が女のい出立ちに魅入られてしまっていた。
ショートに切りそろえられた髪が風と踊るかの如く優雅に靡く。決して華奢ではないと主張する肩幅に、服の上からでも窺えるしなやかな腕のライン。強調されず、しかしながら控えはしない胸部の膨らみ。引き締まった腰のラインは、風ではためくジャケットの奥に確認できる。そして引き締まった腰からは容易に想像できる、鍛えられているであろう脚が伸び、彼女の体重をしかと支えていた。唯一、残念とすればそれは女がスカートではない、といったところか。
両腕を組んだ女の顔がゆっくりと持ちあがる。閉じられた瞼がそっと開かれていく。女の肢体を見つめていた新入生たちは女と目が合うや否や次々に目をそらしていく。それほどにまでに凄まじい眼力。つり目でありながら見開かれた瞳は充分に大きく、確かに気圧される力、があった。そっとマイクを取り出し、電源を入れる。
「ようこそ、新入生の諸君。私はこの大学のトップ、九(く)嬢(じょう)藍(あい)だ」
九嬢藍。その名が瞬く間に観客席を波のように口伝いに広がっていく。九嬢はお構いなしに続けた。
「諸君はこれから六年間、様々なことを学び力、を手に入れるだろう。手にした力は、たとえどのような制約に縛られようとも諸君達のものだ。正義を掲げよ。諸君達の中に厳然と存在する正義に従い、力を行使することを心から祈る。以上だ」
そう言うと九嬢は颯爽と身を翻し、アリーナの入場口へと姿を消した。
「以上と持ちまして、新入生歓迎エキシビジョンを終了します。新入生は各自寮へと戻るように。追って連絡をします」
スピーカーからアナウンスが流れ、次々に観客席から新入生たちが去っていく。その流れに逆らうかのように席に座り続ける者がいた。
「九嬢……か」
ただじっと九嬢が立っていたアリーナを見つめている。
「正義。俺の正義は……」
周囲にはほとんどの学生が寮に戻ったせいで、もぬけの空になった観客席。
「早く寮に戻りましょ、六條(りくじょう)君」
気づくと六條の隣に女が立っていた。女と判断したのは視線だけやった時に映ったのがスカートだからだった。
「君は?」
新入生達は須らく全員が今日初対面だ。名前などわかるわけがない上に、席に座り尽くす男に話しかけるなど正気の沙汰ではない。
「私は八条(やじょう)佳織(かおり)」

序章 完
作品名:University to GUARD 序章 作家名:細心 優一