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University to GUARD 序章

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序章 演武

「これより、国防大学2112年度新入生歓迎エキシビジョンを開始します」
 大学の天井が打ち抜きになったアリーナに観客として集められた新入生は約1000人。場内のアナウンスが終わらぬ内からすでに観客席は歓声に包まれていた。そこかしこで、ネットで聞いた噂だの、先輩から聞いた話だのと周囲に話す者がいれば、そんな話を熱心に聞く輩もいる。
「それでは、エキシビジョンマッチの選手入場です。東口より知能学科六年知能制御専攻、新藤(しんどう)護(まもる)」
 ライトアップされた入口から姿を現したのは、フォーマルな服に身を包み眼鏡をつけいかにもインテリ系を思わせるような長身の男。
「西口より機動学科六年人体動学専攻、五十嵐(いがらし)大我(たいが)」
 ライトがもう一方入口を照らし、正面からライトを浴びて姿を晒したのは先程の男はおおよそ逆のイメージを持ちそうになる男だった。長身なことは共通だが、それ以外はおおよそ違う。ラフな服装を身につけ、髪は短髪で逆立ち両腕には素晴らしい筋肉がしなやかについている。全身に隈(くま)なくあることは容易に想像できた。
 そして、二人の男がアリーナ中央で対峙すると、スーツの男が東口からそっと現れそのまま二人から見て真ん中にあたる場所まで移動し、立ち止まった。
 ポケットからマイクを取りだすと、アリーナの四方向に設置された巨大モニターが起動し、一斉にスーツの男を映し出した。
「新入生の諸君、国防大学への入学心から祝福し歓迎する。我が大学は“国防”のための大学であり、国を守るために諸君はこれからこの大学で色々なことを学ぶ。そして、すでに知っている者もいるかもしれないが、当大学では“アーマノイド”と呼ばれるデバイススーツを支給する。そう、国を守る力だ。今から、この“アーマノイド”を用いた模擬戦闘を諸君の眼前で先輩に披露してもらう。その目にしかと焼き付け、志をより一層高めてくれることを切に願う。他の大学と我が大学の決定的な違いは“単位”にある。これより、諸君は多くのことを学び、学んだ証拠として“単位”を取得していくことだろう。我が大学ではこの“単位”に重きを置く。具体的には、取得“単位”の種類によって諸君に支給される“アーマノイド”の能力の種類が増える。そして“単位”取得時の評定によってその能力に強弱が付く。ここでは“アーマノイド”の強さこそが“力”だ。“力”が欲しくば学業に励めばいい。そういう目でこの模擬戦闘を見つめれば、しかと理解できるはずだ。それでは始めよう」
スーツの男がマイクをポケットに入れると、モニターは新藤と五十嵐の二人が見えるよう、俯瞰的にアリーナ中央を映し出した。モニターの中央に文字が写しだされる。
戦闘・開始
「installation」
 二人が声を発すと瞬く間に両者がそれぞれ両腕に取り付けられた時計のようなデバイスが発光した。凄まじい早さでもってデバイスは様々な金属を吐き出し、吐き出された金属が様々な形状に成形されていく一方で二人の体を成形された部品が包み込んでいく。
 場内はもはやだれもがその“装着”行為に唖然とし、見守っていた。気がつけば、アリーナの中央にはもはやさっきの逆立ち頭をした男<五十嵐大我>や眼鏡をつけた<新藤護>の姿は無く、今なお流行っているSF映画のサイボーグに似た何かが立っていた。全身ががっしりとし、腰には二振りの刀背中に等身よりも大きい剣を備えた人型の機械。立っている位置からしておそらく、五十嵐大我だろう。
「これが、アーマノイド……」
 新入生は口々に“装着”されたアーマノイドをじっと見ていた。突然、二人の人間が見る見るうちに様々なパーツに身を覆われていったのだから仕方ない。
 対する新藤護のアーマノイドは五十嵐大我のものとは雰囲気が違っていた。六枚の翼を背中に備え、装甲が非常に薄いせいで全身がスマートになっている。決定的に違うのは、五十嵐は顔面をアーマノイドで覆う際に顔のほとんどが露出しており、HMD<ヘッドマウントディスプレイ>として片目部分に眼帯のような形で装着しているの対し、新藤護の顔面はすべてがアーマノイドで覆われ、バイザーのような部分が瞳の変わりになっているのか、横一線に発光していた。
 出で立ちからわかるのは、五十嵐は“戦士”のような風体で新藤は“天使”のような風体であることだった。
 装着が終わると同時に先に動いたのは五十嵐だった。背中の大剣を握ると同時に新藤に振り下ろした。刀身からして踏み込みすら不要な距離。振り下ろす速度がどれ程のものか、それは地面の砂が巻き起こったことで容易に想像できた。
「外したか」
 すぐさま返す刃で横なぎに砂煙ごと横に一閃し、五十嵐の眼前にあった砂煙は晴れた。
 そこに新藤の姿はすでに無い。場内の新入生も五十嵐の剣先に注目していたせいで新藤の姿がわからなかった。五十嵐が上を向いた刹那、鏡で反射でもしたような光が場内を一瞬照らした。
「光学か」
「当たり前じゃないか」
 上空に佇む新藤の前には五十嵐の方向に向いてレンズが何重にも重なって浮遊している。
「君と違って僕は機動戦闘が苦手だからね」
 そう言って新藤が一番手前のレンズに手をかざした。わずかな発光の直後、強烈な発光を伴って光が瞬時に五十嵐へと飛来した。五十嵐の周囲では砂が焼け焦げ、レーザーが衝突したポイントはまさにそこだった。
「馬鹿みたいな出力しやがって、くそが」
 五十嵐の大剣に見事なまでの綺麗な穴が空いた。大剣を地面に突き立て、自身は新藤の放出したレーザーの軌道から逸れるように、大剣の斜め後方に跳んだ五十嵐は苦い顔で上空にいる新藤を睨んでいる。もし、五十嵐が不動だった場合を考えるとぞっとするようなレーザーの軌道だった。そっと五十嵐は腰の刀へと手を添え、“居合”でもするかのように構えた。
「エキシビジョンだ、小細工はいらねぇよな」
 ぐっと五十嵐が右足をすり出すと同時に五十嵐のアーマノイド全身から音を立てて空気が排出されていく。
「そうだね、同感だ」
 新藤は両腕を左右に広げ、胸の前でクロスさせた。
「ビジブル」
 瞬く間に新藤の背中に備え付けられた翼の周囲に小型のアンテナが出現し、アンテナの前には何重にもミラーが設置されていく。
 新藤のバイザーに付けられたディスプレイは無数の照準を映し出し、全てが居合を構えたアーマノイドに狙いを定めてはエネルギーをチャージしていった。同時に五十嵐のHMDには右上のゲージが猛烈なスピードで上昇していく。
「オーバードモード起動」
 五十嵐のHMD右上のゲージが満タンになり、“Overed Mode”が表示される。
 新藤のディスプレイ一面に、敷き詰められたように“Possible”と表れると同時に五十嵐は刀を抜き放った
 無数のレーザーが五十嵐へと一点に照射される。照射されている最中、レーザーをまるで滝割りのように五十嵐の放った“居合”の波動が突き進んでいく。
「光学に波動学の力技で対抗するなんて、本当に君は荒いな」
「レーザー照射しか能の無い奴に言われたくない」
作品名:University to GUARD 序章 作家名:細心 優一