作品集Ⅱ
流星群
今、僕の頭上に広がっている神秘。視界の端に映る奇跡。
胸に降り注ぐような流星群と出会った。
いつもと変わらない道。自転車を漕ぐ。
ふと顔をあげ、夜空を眺めた。綺麗だった。
大学受験を目前にして、やらなくてはならないことが山積みで、考えなくてはならないことも日に日に増えていって大きくなって……。現実なんて消えてしまえばいいのになんて。
そんな僕に舞い降りた流れ星。
今だけはすべて忘れて、夜の空気を吸い込んだ。
―― 人生は小説より奇なり
丸っこい女の子の字でそう書かれていたのを思い出す。
彼女の机に貼ってあった黄色い付箋。
僕らの運命とか、未来とか、不安だらけでどうしようもないけど、それも忘れて。
流れてゆくのは宇宙のごみ。
輝くのは宇宙のごみ。
一人の少年の心を癒しているのは宇宙のごみ。
きらきら、閃光。
瞬いて流れて消えていってまた空に還る。
僕は再びペダルを踏んだ。