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香水(コスモス4)

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 そのメールを理解するのに二秒ほどかかった。そして、あぁ、とそのメールの意味を理解した。今日はタカやんが死んで一ヶ月にあたる日だ。みんなでお菓子やら何やらを持ち込んで机に供えようという話を仲間内でしていた。きっと忘れるからと、静香にメールしてもらうことをお願いしていたのだった。
 ありがとうという内容のメールを打って、送信した。何を持っていこうかと考えて、ふとアツシの鞄の上に置かれたコンドームの箱が目に付いた。ラブホテルには一個しか備え付けてないので、いつも個人的に買って持ち込んでいる。さすがにこれはまずいよなぁと、一人で苦笑した。
 そうしていると、アツシがうーんと唸るのが聞こえた。どうやら、目を覚ましたようだ。
「今何時?」
 彼は私の姿を見て、開口一番そう聞いた。
「七時過ぎ」
「早ぇーじゃん」
 アツシは、また一度起こした頭を枕にうずめた。
「ねぇ、私のブラまた踏んでない?」
 私はアツシの身体を揺さぶった。アツシが、明らかに面倒くさそうに顔をしかめて、身体を起こした。ちょうどアツシのお尻があったと思われるあたりで、ぺちゃんこになったブラを発見した。「最低」私は、すぐさまそれを抜き取った。アツシは何も云わずに、またそのまま寝てしまった。その身体を、思い切り蹴り上げたい衝動にかられたけれど、それを抑えてさっさと洗面所に戻った。
 朝は苦手だけれど、身支度のためであれば時間は惜しまない。それが、私のモットーだ。自分の姿を全身鏡に写してチェックしてから、鞄からあるものを取り出す。サムライウーマンの香水。それを、胸元と太ももの辺りに振り、それから耳の後ろ、手首と順々につけた。部屋に甘い匂いが立ち込める。これがあって、初めて私は私になる。その香りを自分で確かめてから、起きる気配のないアツシの額にすばやく軽いキスをして、そのまま部屋を出た。
 フロントの前を通ると、普通ならいないはずの受付のオバサンが出てきた。
「連れ、まだ中で寝てますから」
 そう、一言だけ云ってさっさと出た。時計の時刻は七時四十五分を少し回ったところだった。ローソンで朝食とタカやんの机に備えるお菓子を買っていこうと、まだ人の少ないホテル街を一人で歩き始めた。

作品名:香水(コスモス4) 作家名:紅月一花