校正ちゃん、再び
話を聞いてると、校正ちゃんのようなデバイスをたくさん作って僕をはじめとした人たちの頭の中へ埋め込んだ “異星人みたいな連中” って、いったい何者なんだろうって思うけど、そこまでは、校正ちゃん自身も知らされてないのかな?
「で、さっき言ってた、いつまでも一緒に居られない、ってどういうこと?」
「憶えてなくていいことだけは、しっかり憶えてるのね、ま、言葉通りの意味よ」
「じゃ、校正ちゃん、いつかは僕の頭の中から居なくなっちゃうの?」
「ま、そういうことになるわね」
「それって、いつなの?」
「またぁ。待ち遠しいって顔に大書きしてるみたい。ま、その内わかるわよ」
「えー、教えてくれないの?」
「だから、キミ、まだまだ修行中でしょ? 随分と先の話よ」
「ほぉ。僕が一人前になったらってことかな」
「ま、そう思ってれば、当たらずとも遠からず、って感じかな?」
「ふーん……」
草の根の校正者として社会の役に立てるだけの力を身につけられるように、校正ちゃんが一般人である僕の頭の中に埋め込まれたという、一応の理屈はのみ込めたものの、どうして僕が対象に選ばれたのだろう? という疑問は残った。例えば、あの健康診断のお知らせを作った総務課の女の子みたいな人ではいけなかったのだろうか? 校正ちゃんがついていれば、少なくとも、この間みたいなミスをすることはなくなる。まぁ、他に色々と問題を抱えることになるけど……。
「校正ちゃん、どうして僕を選んだんだよ?」
「ん?」
「いや、例えば、この間の総務課の女の子なんかじゃダメなの?」
「あらあら。やっぱり、キミは何にもわかってないんだなぁ」
「どういうこと?」
「あたしの趣味に決まってるじゃない!!」
校正ちゃんは、外見が白いウサギのぬいぐるみで、目も鼻も口もついてないからよくわからないけど、何となく、ハニカミながら微笑んだような気がした。
——校正ちゃん2・了