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天の卵~神さまのくれた赤ん坊~【後編】 Ⅳ・完結

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 思わず涙が溢れてきた。
 どうして、この子の存在をただの一瞬でも否定したりしたのか。苦い後悔がよぎった。
 その刹那、迸るような愛おしさが身体の芯から突き上げてきた。
 ―この子は私の子ども。たとえ他人の腹を借りて生まれてきても、紛れもない私自身の血を引く我が子なのだ。
 私はもう母親なんだわ。
 私にはもう、この子しかいない。
 紗英子は赤ん坊を抱く腕に、ほんの少しだけ力を込めた。先ほどまで涙の膜の向こうでぼやけた花の色が今は、はっきりと見えた。
 澄んだ冬の陽射しが眼にも鮮やかな黄色の花を優しく包み込んでいる。外は身を切るような寒さにも拘わらず、その花の周囲は温かさと希望に溢れているようでもあった。
 紗英子には、その先に自分と我が子の未来が続いているように思え、思わず微笑していた。

♦Epilogue(終章)♦

我が子真歩へ

 私の赤ちゃん。
 ようこそ、ママの許へ来てくれて、ありがとう。あなたの誕生には、たくさんの人の想いがこもっていることをどうか忘れないで。
 あなたにはママしかいないけれど、ママはパパの二人分、あなたを大切にして愛してあげるから。
 いつか、あなたにもパパのこと、あなたがどうやってこの世に生まれてきたかを話すときがくるでしょう。
 どうか忘れないで。
 この世に生まれてきたということが、どんなにかけがえなく幸せなことかを。
 あなたはママの宝物、天の神さまが授けて下さった大切な大切な赤ちゃんなんだからね。

             (完) 
     
  
 
 
  
 
グラジオラス
  花言葉
    情熱的な恋、密会、用心、たゆまぬ努力。十一月十日の誕生花。十一月生まれの人の誕生石はトパーズ。