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天の卵~神さまのくれた赤ん坊~【後編】Ⅲ

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 三度目の絶頂はあまりに烈しく、有喜菜は一瞬、意識を飛ばした。しかし、鋭い突きと共に熱い飛沫が最奥の感じやすい場所で弾け、撒き散らされる感覚に我を取り戻す。
「あぁ、ああ」
 感じやすくなった箇所に直接、熱い彼の液体が触れ、内壁へと滲み込んでゆくその感覚はまた格別であった。その場所から全身にひろがってゆく妖しい震えは、まるで小さな泡が次々に生まれては膨らみ、身体中を駆け巡っているかのようでもある。
 有喜菜は今度という今度は、官能の焔に跡形も残らないほど完全に呑み込まれ灼き尽くされた。
「今度は代理出産などという形ではなく、こうやって俺をちゃんと受け容れて、俺の子を産んでくれ」
 欲情に濡れた声が熱い飛沫と共に有喜菜に注ぎ込まれる。
 まだ烈しい行為の名残にたゆたっている有喜菜を直輝が背後から抱きしめる。
「もう離さない」
 そっと有喜菜を抱き寄せて髪に鼻先を埋めながら、聞いている者が辛くなるような切ない口調で呟いた。
 その言葉は、有喜菜の心を鷲掴みにした。
 紗英、あなたが悪いのよ。
 有喜菜は心の中で紗英子に呼びかける。
 もう引き返せない、戻れない。
 自分は二度と引き返せない修羅の橋を渡ってしまった。たとえ友と呼んだ仲であろうと、その人の夫であろうと、有喜菜は自分が直輝の掴んだ手を放すことはできないだろうと思った。
 直輝が有喜菜の髪の毛をひとすじ掬う。唇を寄せられ、妖しい震えがまた全身を走る。まるで髪の毛一本一本にも神経が通っているかのようだ。
「俺の子を産むのは君だけだ」
 掠れた声が耳朶を掠め、また戦慄にも似た快感が四肢を走り抜ける。知り合ってから二十四年目にして、今日、有喜菜は初めて直輝に抱かれた。そのわずかな時間で、生まれて初めての絶頂を知り、女としての歓びも哀しみも知り得たのだった。