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吉良吉田殺人事件

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島田の心にすでに覚悟の様なものが芽生えていた。しかし、今の島田はこうせざるを得なかった。一刻も早く、少しでも遠く、彼女と出会ったところから離れなければならなかった。そして、今起きたこと、もっと言えば今までの自分の人生を振り返らなければならなかった。
「俺の人生って、何だ...」
島田は自分に問いかけた。
「俺は一体、何をするために生まれて来た...?」
結局、家族も、仕事も何も手に入れることも出来ず、揚句の果てに、ほんの一瞬、心から愛し、気持ちを分かち合えたあの女性をあんな目に合わせた...俺の人生って、一体何だ...!?
島田は、深く問いかけざるを得なかった。しかし、それでも答えはまるで、暗いトンネルの闇に包まれたままだった。
「それにしても、あの素っ頓狂な親父は何者だ。やけに親切ぶって、いまどき見たことも無い。」
島田は少しだけ、京太郎の存在が気にかかった。
当の本人たちは、何やら親しげなのか、夫婦喧嘩か、時折声色を変えて話している。そこにはこれまで島田の人生で感じたことの無い、何かがあった。

「俺の人生って、何だ。」
島田は再び、自分に問いかけた。

「おーい、何か大きなものがかかったぞ!」
早朝の漁船の中だった。船頭の斉藤が、船尾から仕掛けた底引網を引き揚げながら、周りの仲間に声を掻けた。

               第一部  完

                  続く



作品名:吉良吉田殺人事件 作家名:Yo Kimura