法定寿命~双つの世界~【前編】
男は消えゆく意識の中で口を動かしているが言葉にならない。…そして止まった。
______________________________________________________________________________________________________________
私が窓から身を乗り出して叫んだ言葉、それが人々の興味を誘った。あの短い時間の中で一体犯人と被害者の間に何があったのか?警察は当然としてもマスコミにも執拗(しつよう)に聞かれた。しかし私は一切その問いには答えなかった。本当のことを話しても頭のヘンな男が偶然頭のヘンな男を人質に取っただけ、と思われるのが関の山だ。
しかしこの事件をきっかけにミュージシャンだった私の過去が明らかになった。そしてかつて作った私の曲が広く一般に流れた。
作品名:法定寿命~双つの世界~【前編】 作家名:鷲尾悟司