イカ×スルメ
夕暮れを見るのが好きだった。夕暮れの後は夜が来た。夜は私たちにとって、危ない。でもその前の赤い海が私は好きだった。いや、もしかしたら、危うさを伴う美しさが好きだったのかもしれない。そのまま朽ちてもいいと、何度も思った。
何度も、思っていた。
久しぶりに浸した塩水は、案外冷たくて、でも、その癖に暖かくなんか感じた。指の先から、ゆっくりと溶けていく感じ。ふやけていく。私は海に帰るのか。
恐れていた水、今は怖くない。
私は海に帰っていく。
それもいイカ。
ふっと笑って、あなたの背を追った。
END