母と娘
母 と 娘、、
檀上 香代子
O 立ち並ぶ5階建てのマンション(団地)
団地道の一つの棟の傍にバス停。一台のバスが止まる。17歳の
清子が、大機名リュックを背負い大きな熊のぬいぐるみを抱えて
降りてくる。すぐ傍の棟を見上げる清子。フッと深い息をつき階
段に向かう。階段から降りてくる正義。2階を見ながら何か二言
三言話して、別れる。
2階に上がり、ドアをノック、ドアを開ける。
O 玄関に続くキッチン。
清 子 (明るく)ただいま。
啓 おかえりーーーー食事は?
清 子 はらぺっこ。(荷物を居間のふすまの前に置く)
啓 入り口で無く、居間へ。
清 子 わかった。------コレからよろしくおねがいします。
啓 ―――(黙々とカレーをつぎ、テーブルにおく)
清 子 ワァ、久しぶりにカレー! う~ん、美味い! お母さんの
味だ!
啓 久しぶりだもんね。大下さんは?
清 子 うん、2DKの部屋が借りれるまで、実家に帰って待ってる
からって言って来た。
啓 それでーー
清 子 なるべく、早く迎えに行くって。
啓 そう。
清 子 おかわりある?
啓 (皿を受け取り)お兄ちゃんに会わなかった?
清 子 階段のところで、――二人の時間あげるって、ふ、ふふ。
啓 そうーーー(皿を渡して、食べる清子をジッと見つめる。)
O 三ヶ月前
同じ団地の棟。ヴァンが一台とまっている。荷物を持った清子
と大下が階段を下りてきて、荷物を積み込み、二人して啓の部
屋に入って行く。キッチン。テーブルのイスに腰掛けている啓
二人玄関を上がり啓の前に座る。不穏な空気が流れてる
清 子 どうして!
啓 ――――――
大 下 お母さん、二人の事は賛成してくださったんですよね。
清 子 そうよ。賛成してくれたじゃない!
啓 ――――結婚を前提とした、お付き合いは認めたよ。
大 下 ですから、早いほうがーーー。
清 子 そうよ。でも、入籍するのにお母さんのサインがいるのよ。
啓 ―――――――。
清 子 どうして、わかってくれないの!
大 下 清子!
啓 (大下に向かい)2週間まえですよね。 はじめて、挨拶さ
れたのは?
大 下 はあ。
啓 そして、その日から、---清子は帰ってこなかった。
清 子 (泣きそうな声で)それは、バイトが遅い時、帰るのに大下
さんの部屋のほうが近いからーーー。
啓 でも、結婚してた訳じゃない。
大 下 ですから、二人で結婚するのに、籍をいれたいとーーー。
啓 一週間―――。
清 子 時間の問題じゃないわよ!
啓 (大下に)清子は、いま17歳、恋に恋する年齢、親の干渉か
ら自由になりたい年頃です。
大 下 はあ。
啓 結婚と言う事が解っているとは思えないの。
大 下 ――――
清 子 失礼ね。解っているわよ!
啓 だから、清子の結婚に責任が持てない。(ゆっくり)20歳に
なれば、自分で入籍出来るでしょう。
大 下 今でも3年後でも結婚は同じじゃないですか。お母さん。
啓 同じなら、20歳でもいいわけでしょう。なぜ急ぐの?
大 下 ――――
清 子 だって、入籍すれば、扶養手当が付くんだよ、ねえ。
啓 其れがなければ、生活できませんか?
大 下 (強く)そんな事はありません!
これでもIT会社の取締役ですから。
啓 そうですよね。高給取りだとか。未成年の子を、親元から連れ
て行くということは、どういうことか、おわかりですよね。
35歳の貴方には。
大 下 ?
啓 夫だけでなく、保護者の役割もあるって事。
大 下 解っているつもりです。
啓 だったら、この子が自分で籍を持って行けるまで、保護者とし
て、―――。
清 子 私の結婚に反対なんだ!(泣く)
啓 清子! 二人で暮らすなとはいってない。貴方達の気持ちが本
物なら、続く。 2~3年ぐらい。
清 子 屁理屈だ!
大 下 清子!解りました。今日は、コレで失礼します。
清 子 どうしてもダメなのう?
啓 ダメ!コレだけは、恨まれても嫌!
大 下 さあ、帰ろう、清子。
二人出て行く。部屋のふすまが開いて正義でてくる。
正 義 お母さん、よくがんばったね。大丈夫?
啓 ―――うん。
正 義 何度出ようかと思ったけど、反対に
清子は俺に対して反抗期だし、いま清子は何も見えないから。
啓 そうね。
正 義 清子は、経験しなければわからないタイプ。もし、傷ついて帰
ってくることあったら、百パーセント受け止めてやればいい。
啓 ――――。
正 義 僕の妹だから、馬鹿じゃない。そのうち、お母さんの気持、
解ってくれるよ。
啓 ――そうね。
正 義 泊まって行こうか。
啓 ううん、一人のほうがいいみたい。それに明日早いんでしょ。
正 義 まあ、始発のバスじゃ、間にあわないけど、45分早く起き
て、駅まで歩けばいいかれら。
啓 大丈夫だから、そんな無理しなくていいよ。
正 義 本当に。
啓 うん。
正 義 じゃ、夕飯一緒に食べてから、帰るよ。
啓 うん。
O清子が実家に帰って来てから、一ヵ月後
啓の部屋
玄関が開いて清子、啓が入ってきながら。
清 子 わあ!久しぶりにデイズニーランド、満喫したァ。
啓 ふ、ふふ、まだまだ子供だね。
清 子 お母さんが一緒に乗り物に乗ってくれたら、もっと、楽しか
ったのに!
啓 うん、苦手だからね。せっかくだから、大下さんも呼べばよ
かったのに。
清 子 (強く)嫌よ!せっかくお母さんとの二人の時間に。
荷物を置き、テーブルのイスにすわる
啓 ―――。
お茶を居れ啓もイスへ。
啓 (ためらいがちに)ねえ、ひょっとして、向こうへ帰る気なく
なってるんじゃないの?
清 子 ―――。
啓 間違えたらごめん。此処のところ毎日電話してたのに、彼の留
守を狙って、留守電を入れるでしょ。
清 子 うん。
啓 もし帰るつもりがないのなら、はっきりしたほうがいいと思う。
あちらは、いいお年なんだから。
清 子 う~ん、嫌なんだな。会うの。
啓 逃げるわけ行かないでしょう。
清 子 うん
電話が鳴る。清子と啓、顔を見合せる。啓奥で電話を受ける。
啓 大下さんからよ。
清 子 居るって云ったの?
啓 籍は入ってないけど、貴女は奥さん、でしょう。
檀上 香代子
O 立ち並ぶ5階建てのマンション(団地)
団地道の一つの棟の傍にバス停。一台のバスが止まる。17歳の
清子が、大機名リュックを背負い大きな熊のぬいぐるみを抱えて
降りてくる。すぐ傍の棟を見上げる清子。フッと深い息をつき階
段に向かう。階段から降りてくる正義。2階を見ながら何か二言
三言話して、別れる。
2階に上がり、ドアをノック、ドアを開ける。
O 玄関に続くキッチン。
清 子 (明るく)ただいま。
啓 おかえりーーーー食事は?
清 子 はらぺっこ。(荷物を居間のふすまの前に置く)
啓 入り口で無く、居間へ。
清 子 わかった。------コレからよろしくおねがいします。
啓 ―――(黙々とカレーをつぎ、テーブルにおく)
清 子 ワァ、久しぶりにカレー! う~ん、美味い! お母さんの
味だ!
啓 久しぶりだもんね。大下さんは?
清 子 うん、2DKの部屋が借りれるまで、実家に帰って待ってる
からって言って来た。
啓 それでーー
清 子 なるべく、早く迎えに行くって。
啓 そう。
清 子 おかわりある?
啓 (皿を受け取り)お兄ちゃんに会わなかった?
清 子 階段のところで、――二人の時間あげるって、ふ、ふふ。
啓 そうーーー(皿を渡して、食べる清子をジッと見つめる。)
O 三ヶ月前
同じ団地の棟。ヴァンが一台とまっている。荷物を持った清子
と大下が階段を下りてきて、荷物を積み込み、二人して啓の部
屋に入って行く。キッチン。テーブルのイスに腰掛けている啓
二人玄関を上がり啓の前に座る。不穏な空気が流れてる
清 子 どうして!
啓 ――――――
大 下 お母さん、二人の事は賛成してくださったんですよね。
清 子 そうよ。賛成してくれたじゃない!
啓 ――――結婚を前提とした、お付き合いは認めたよ。
大 下 ですから、早いほうがーーー。
清 子 そうよ。でも、入籍するのにお母さんのサインがいるのよ。
啓 ―――――――。
清 子 どうして、わかってくれないの!
大 下 清子!
啓 (大下に向かい)2週間まえですよね。 はじめて、挨拶さ
れたのは?
大 下 はあ。
啓 そして、その日から、---清子は帰ってこなかった。
清 子 (泣きそうな声で)それは、バイトが遅い時、帰るのに大下
さんの部屋のほうが近いからーーー。
啓 でも、結婚してた訳じゃない。
大 下 ですから、二人で結婚するのに、籍をいれたいとーーー。
啓 一週間―――。
清 子 時間の問題じゃないわよ!
啓 (大下に)清子は、いま17歳、恋に恋する年齢、親の干渉か
ら自由になりたい年頃です。
大 下 はあ。
啓 結婚と言う事が解っているとは思えないの。
大 下 ――――
清 子 失礼ね。解っているわよ!
啓 だから、清子の結婚に責任が持てない。(ゆっくり)20歳に
なれば、自分で入籍出来るでしょう。
大 下 今でも3年後でも結婚は同じじゃないですか。お母さん。
啓 同じなら、20歳でもいいわけでしょう。なぜ急ぐの?
大 下 ――――
清 子 だって、入籍すれば、扶養手当が付くんだよ、ねえ。
啓 其れがなければ、生活できませんか?
大 下 (強く)そんな事はありません!
これでもIT会社の取締役ですから。
啓 そうですよね。高給取りだとか。未成年の子を、親元から連れ
て行くということは、どういうことか、おわかりですよね。
35歳の貴方には。
大 下 ?
啓 夫だけでなく、保護者の役割もあるって事。
大 下 解っているつもりです。
啓 だったら、この子が自分で籍を持って行けるまで、保護者とし
て、―――。
清 子 私の結婚に反対なんだ!(泣く)
啓 清子! 二人で暮らすなとはいってない。貴方達の気持ちが本
物なら、続く。 2~3年ぐらい。
清 子 屁理屈だ!
大 下 清子!解りました。今日は、コレで失礼します。
清 子 どうしてもダメなのう?
啓 ダメ!コレだけは、恨まれても嫌!
大 下 さあ、帰ろう、清子。
二人出て行く。部屋のふすまが開いて正義でてくる。
正 義 お母さん、よくがんばったね。大丈夫?
啓 ―――うん。
正 義 何度出ようかと思ったけど、反対に
清子は俺に対して反抗期だし、いま清子は何も見えないから。
啓 そうね。
正 義 清子は、経験しなければわからないタイプ。もし、傷ついて帰
ってくることあったら、百パーセント受け止めてやればいい。
啓 ――――。
正 義 僕の妹だから、馬鹿じゃない。そのうち、お母さんの気持、
解ってくれるよ。
啓 ――そうね。
正 義 泊まって行こうか。
啓 ううん、一人のほうがいいみたい。それに明日早いんでしょ。
正 義 まあ、始発のバスじゃ、間にあわないけど、45分早く起き
て、駅まで歩けばいいかれら。
啓 大丈夫だから、そんな無理しなくていいよ。
正 義 本当に。
啓 うん。
正 義 じゃ、夕飯一緒に食べてから、帰るよ。
啓 うん。
O清子が実家に帰って来てから、一ヵ月後
啓の部屋
玄関が開いて清子、啓が入ってきながら。
清 子 わあ!久しぶりにデイズニーランド、満喫したァ。
啓 ふ、ふふ、まだまだ子供だね。
清 子 お母さんが一緒に乗り物に乗ってくれたら、もっと、楽しか
ったのに!
啓 うん、苦手だからね。せっかくだから、大下さんも呼べばよ
かったのに。
清 子 (強く)嫌よ!せっかくお母さんとの二人の時間に。
荷物を置き、テーブルのイスにすわる
啓 ―――。
お茶を居れ啓もイスへ。
啓 (ためらいがちに)ねえ、ひょっとして、向こうへ帰る気なく
なってるんじゃないの?
清 子 ―――。
啓 間違えたらごめん。此処のところ毎日電話してたのに、彼の留
守を狙って、留守電を入れるでしょ。
清 子 うん。
啓 もし帰るつもりがないのなら、はっきりしたほうがいいと思う。
あちらは、いいお年なんだから。
清 子 う~ん、嫌なんだな。会うの。
啓 逃げるわけ行かないでしょう。
清 子 うん
電話が鳴る。清子と啓、顔を見合せる。啓奥で電話を受ける。
啓 大下さんからよ。
清 子 居るって云ったの?
啓 籍は入ってないけど、貴女は奥さん、でしょう。