空のくじら
博士 ……わかっていた。何もできないことなど知っていた。
宮古 それでも。
博士 それでも! 会いたかったんだ!
宮古 ……。
博士 ただ、深雪に、会いたかったんだ。
宮古 ……そうですね。
博士 ……帰ろう。青山君は。
宮古 先に機体に戻ってセルフチェックをしてますわ。
博士 そうか。
宮古 ええ。
博士 ……変わらないか。
宮古 博士もしてごらんになります? セルフチェック。
博士 なに。
宮古 それくらいの時間はありますわ。
博士 ……そうか。
宮古 先に戻っています。
博士 ああ。
宮古退場
博士 歴史を変える気などない。そんなことしても仕方がない。分かっている。大丈夫だ。深雪、
君の言うとおり、私は大丈夫だ。
博士退場
青山 博士遅いっすね。
宮古 迷子になってんじゃないの?
青山 いいんすか?
宮古 たぶん大丈夫。
博士 待たせたな。
宮古 あら意外と速い。
青山 じゃあさっさと―――
宮古 ずらかりましょう。
青山 そうこなくっちゃ。
暗転
宮古 痛……やっぱ急ごしらえってだめよ……着地の不安定感が……
青山 宮古さん……大丈夫ですか……。
宮古 あたしは大丈夫……博士は?
明転
博士 腰が……
宮古 またぁ?!
博士 モニターは。
青山 2157年7月8日……午前4時13分41秒……。
博士 悪くない値だな。
宮古 あ……博士。
博士 なんだね。
宮古 空に、くじらが泳いでいます!
end
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