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舞台裏の仲間たち 13~15

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 「愛する人、黒光(こっこう)への
 狂おしいほどの想いと、許されない男女の関係に、
 思い悩んで苦しんでいた碌山が
 最後の最後に、執念を込めて作り上げたとも言われているのが
 この作品だよ。
 へえぇ、・・・君にも何か伝わる?。」



 「悲しそうに身をよじっているくせに、
 どこかで、生きて行くことを楽しんでいるようなそぶりが、
 全身から感じるの・・・
 不思議な作品だよね、なんなんだろう。
 鳥肌が立ちそう。この感じ・・」


 「本物が見たい?」


 「有るの!」



 「あるよ。安曇野に有る小さな美術館に。
 行ってみるかい?」

 「行く。絶対に行く。約束してくれる」


 「ああ、いいよ、
 でも公演を成功させてからだけどね。」


 「もちろん。
 だから大好きなんだ、優しい石川さんが・・・」


 「おいっ。」



 チロリと舌を出した茜が
シャネルの香りをかすかに残して、事務室から出て行きました。
・・・しかし残った香水が、長年馴染んできたNo5ではないようです。
あれ、という顔をしていると、相向かいで丸いメガネをかけた
女子事務員が、ひとつ「コホン」と空咳をしてから、
声をひそめて教えてくれました。




 「シャネルのNO・19です。
 シャネル自身が晩年になってから、
 プライベート用に好んで、愛用をした香水のひとつです。
 彼女の誕生日、8月19日にちなんで
 そうネーミングをされた、と聞いています。」

 「詳しいね・・・
 あれ、君も香水を愛用してたっけ?。」

 「失礼な。
 香水は女にとっては、第二ともいえる、
 それも”とびっきりセクシュアルな服”と、シャネル自身が語っています。
 私も、普段はご覧のように見たままですが、
 お洒落するときには、必ず愛用をするようにしています。
 最近になってから実は、
 有る事情のために私も、従来からの香水を取り替えました。
 偶然にも、依然、か・の・じ・ょ・が愛用をしていた
 シャネルのNo・5に変更をしました。
 ですが、茜さんは
 私とは反対に、No・19に進化したようですね。
 ・・・何があったのでしょう。」
 

(14)へつづく