こりゃ・・・恋!?
サトルは、携帯電話のアドレス帳を開いた。
「変わった?」
「え?っていうか、サトル君が何で知ってるの?」
「一回、酔っ払ってだったか、勝手に登録して、そのまんまなだけだよ」
「消せばいいじゃない。彼女誤解するよ」
「消す方が、意識してるみたいじゃん」
「そっかなー……」
「じゃあな」
「うん、またね」
サトルは踵を返して歩き始めたが、ふと後ろを振り向くと、ユリの後ろ姿が遠ざかっていった。
(あれ?本当に待ち合わせだったのかな?)
サトルは、包みを持って一旦部屋に戻った。
冷蔵庫から水を出し、一杯飲むと、再び靴を履いた。
ポケットからの振動とメロディーに取り出すと、バイト先からだ。
「はい」
店長からの連絡は、今日の代わりに明日出勤して欲しいというものだった。
サトルは迷ったが、(午前の部なら)と承諾した。
部屋に戻ると、することも無く音楽をかけながらぼんやりとした。
(あ、明日の待ち合わせのメールしとくか)
>>明日の時間と場所は、********* じゃあね。
>>はーい。楽しみにしてるね。
携帯電話を置くと、明日のデート予定を浮かべながら壁に凭れかかった。
ふと、さきほど置いた包みに目をやると、ユリのことが浮かんだ。
帰りに見たユリの後姿が、脳裏から離れないように 曖昧な影を思い出す。
カオリの顔を思い浮かべるが、いつの間にか ユリの笑顔に変わってゆく。
次第に ユリのことを考えている、そんな自分に気付いた。
サトルは、冷蔵庫から水を出し一気に飲んだ。
――こりゃどうした!
サトル、動揺してる場合か……。