こりゃ・・・恋!?
大学生のサトルは、今まで友人と話したり、腹ごしらえに立ち寄るのは、ファミリーレストランや多店舗展開している喫茶店だった。
軽い財布で出かけても価格は手頃のうえ、時間制限を感じなくて済むところが良かった。
そして、始めたのが 期間ごとに同じものを食べたり、飲んだりすることだった。
そんなサトルは、今年の夏 ある店でバイトをしていた女の子に一目ぼれした。
彼女の名はカオリ。
カオリとのデートに向けて『脱・お子ちゃま嗜好』を目指すべく 偶然、見つけた喫茶店に通うサトルだった。
何らかの行き違いはあったものの、カオリと付き合えるようになったサトルが その初デートにその店を選んだのはなんとカオリの叔父と叔母が営む喫茶店だった。
そして、サトルは運命を感じた……かどうかは、サトルは表してはいない。
こうして、サトルの喫茶店巡りの殆どは、時々カオリも働くカオリの叔父と叔母が営む喫茶店になった。
店の名は『おじさんキッチン♪』
何とも色気のない感じだが、ちょっと美味しいものがありそうな、そんな感じが漂う……気がした。(はて?誰が?)
「いらっしゃいませ。おかえりなさい」
店のロゴの入ったエプロンをつけたカオリが迎えた。
「ただいま。おじさん、おばさん、カオリさん」
サトルが、入って行くと、男は(また来たか)と言わんばかりの口元でちらりとサトルに目を向ける。
確かに、可愛い姪に付く虫はいいものではないだろう。
ずいぶん馴染んだとはいえ、サトルにはまだ緊張の一瞬だった。
「気にしないの」
女は、テーブルについたサトルのテーブルに水を置く。
「はい。どうも……」
サトルが、メニューを広げようとすると、女は、少し顔を覗きこんで微笑みながら意地悪そうな目をした。
「いつのまにか、私、おばさんになっちゃったね」
「あ、いえ、心では、いつもお姉さんですよ……はい」
「まっ仕方ないけどね。ここでは、それが呼び名だから」
サトルは、頬の一部に引き攣りを感じながらも笑って見せた。
「でね、カオリは何がいいと思う?」
「え?カオリさんですか?」
「そう、名前もねぇ。それにサトル君だって、他の男に『カオリさーん』なんて呼ばれてるの 嫌でしょ」
「おーい、坊主、決まったか?」
カウンターの向こうから男が声を掛けた。
壁際に座っていた女子ふたりが(坊主だってぇ)と小声でクスクス笑った。