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天の卵~神さまのくれた赤ん坊~【前編】Ⅲ

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 何もかもが順調にいき、すべてが丸くおさまるはずだ。
 無理にそう言い聞かせている中に、極度の緊張が解けて気が抜けたのか、紗英子はくずおれるようにその場に座り込んだ。
 喉元から血の滴が滲んでいるのにも頓着せず、紗英子は虚ろなまなざしをさ迷わせる。
 大丈夫、大丈夫。既に何度も呟いた科白を呟きながら、放心したように虚空を見つめている。
 マンションの外は月もない闇夜で、夜はどこまでも深かった。木枯らしがビルの壁に当たって聞こえるビル風が唸りを上げている。それはまるで、迫り来る嵐の予兆のように紗英子の耳に響き、薄ら寒い風は心の中にまで吹き込んでくるようだった。
   (前編・終わり)