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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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私に還る日

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 暖野がいくら意識を凝らしてみても、失われた道が再び現れることはなかった。
「行きましょう、ノンノ」
 いつまでも道の真ん中に立っている暖野に、マルカが言う。
「行くって、どこへ? ここにはもう、行くところなんてないじゃない。どうせ、みんな消えてしまうんでしょう?」
 知らず、暖野の声は棘があるものとなっていた。
 マルカが哀しげな目を伏せた。
「ごめんなさい」
 暖野は言った。「あなたに、こんなこと言っても仕方ないのに」
「いえ、いいんです。私が無神経すぎたのです」
「私、疲れたわ」
 溜め息混じりに暖野は言った。極度の疲労が彼女を支配していた。ここでのことが、あまりにも理解を超えていたからでもある。それだけでなく、現実世界での最後の感覚も甦ってきたのだった。
 そう、私は疲れているのよ――
 今日、学校で起こったことが、今では遠い昔の出来事のように思われた。学園祭の実行委員に選ばれ……。
 そうだ! 劇のことがあったんだわ――!
 どうしよう……――
 どうして、考えなければならないことが一時に幾つも出来るのだろう。もう少しばらばらに起こってくれればいいのに、と暖野は思った。
作品名:私に還る日 作家名:泉絵師 遙夏