私に還る日
暖野がいくら意識を凝らしてみても、失われた道が再び現れることはなかった。
「行きましょう、ノンノ」
いつまでも道の真ん中に立っている暖野に、マルカが言う。
「行くって、どこへ? ここにはもう、行くところなんてないじゃない。どうせ、みんな消えてしまうんでしょう?」
知らず、暖野の声は棘があるものとなっていた。
マルカが哀しげな目を伏せた。
「ごめんなさい」
暖野は言った。「あなたに、こんなこと言っても仕方ないのに」
「いえ、いいんです。私が無神経すぎたのです」
「私、疲れたわ」
溜め息混じりに暖野は言った。極度の疲労が彼女を支配していた。ここでのことが、あまりにも理解を超えていたからでもある。それだけでなく、現実世界での最後の感覚も甦ってきたのだった。
そう、私は疲れているのよ――
今日、学校で起こったことが、今では遠い昔の出来事のように思われた。学園祭の実行委員に選ばれ……。
そうだ! 劇のことがあったんだわ――!
どうしよう……――
どうして、考えなければならないことが一時に幾つも出来るのだろう。もう少しばらばらに起こってくれればいいのに、と暖野は思った。
「行きましょう、ノンノ」
いつまでも道の真ん中に立っている暖野に、マルカが言う。
「行くって、どこへ? ここにはもう、行くところなんてないじゃない。どうせ、みんな消えてしまうんでしょう?」
知らず、暖野の声は棘があるものとなっていた。
マルカが哀しげな目を伏せた。
「ごめんなさい」
暖野は言った。「あなたに、こんなこと言っても仕方ないのに」
「いえ、いいんです。私が無神経すぎたのです」
「私、疲れたわ」
溜め息混じりに暖野は言った。極度の疲労が彼女を支配していた。ここでのことが、あまりにも理解を超えていたからでもある。それだけでなく、現実世界での最後の感覚も甦ってきたのだった。
そう、私は疲れているのよ――
今日、学校で起こったことが、今では遠い昔の出来事のように思われた。学園祭の実行委員に選ばれ……。
そうだ! 劇のことがあったんだわ――!
どうしよう……――
どうして、考えなければならないことが一時に幾つも出来るのだろう。もう少しばらばらに起こってくれればいいのに、と暖野は思った。