私に還る日
「そうですか……」
マルカが言う。「つまり、この世界の種子がインナースペースだからなのですよ」
「それはさっき――」
「そう、話に出てきた内宇宙――小宇宙のことです」
「人の心の中にあるっていう?」
「ええ。だから、ノンノが必要なのですよ」
「ちょっと、縮めないでくれる? それじゃさっぱり分からないわ」
「博士の話で分かってもらえたと思ったのですが――」
マルカが言う。「例えばですね、私がここを救うために想像したとしましょう。でもそれは、私のインナースペースでしかありません。それは解りますよね」
「ええ。何となく、だけど……」
「この世界が、その種子となる思念を元に、多くの人の思いが合わさってできたものだということも」
暖野が頷く。それを確かめて、マルカがさらに続けた。「だから、私が想像したとしても、その種子は芽吹くことはないでしょう。たとえアゲハ博士とともに想像力を目一杯働かせたとしても、たかだか知れていますからね。それに、私の想像は、この世界に反映させることができないのです」
「あなたが、ここの人だから?」
「そうです。とりあえず、今はそう理解してもらうのが一番いいでしょう」
マルカが含みありげな言い方をした。「私の想像によって出来る世界は、ここが消滅すると同時に滅んでしまいます。その世界は、ここを元に成っているからです。だから、この世界を救えるのは、もう一つ上の階層思念が必要なのです」
「ここは、私の世界よりも下の階層なの?」
世界に上や下の概念があるものなのかと、暖野は不思議に思った。
「あなたや、あなたの世界の他の人達の意識下という意味では」
暖野にはやはりよく解らなかった。それを察してか、マルカが続けて言う。「上や下というものは、世界に最初からあるものではないのです。例えば、星はノンノの上にありますが、下にもあるでしょう」
「星が? 下にですって?」
「よく考えてみて下さい」
マルカはその時間を与えるように黙った。
暖野は言われたとおりに考えてみた。
マルカが言う。「つまり、この世界の種子がインナースペースだからなのですよ」
「それはさっき――」
「そう、話に出てきた内宇宙――小宇宙のことです」
「人の心の中にあるっていう?」
「ええ。だから、ノンノが必要なのですよ」
「ちょっと、縮めないでくれる? それじゃさっぱり分からないわ」
「博士の話で分かってもらえたと思ったのですが――」
マルカが言う。「例えばですね、私がここを救うために想像したとしましょう。でもそれは、私のインナースペースでしかありません。それは解りますよね」
「ええ。何となく、だけど……」
「この世界が、その種子となる思念を元に、多くの人の思いが合わさってできたものだということも」
暖野が頷く。それを確かめて、マルカがさらに続けた。「だから、私が想像したとしても、その種子は芽吹くことはないでしょう。たとえアゲハ博士とともに想像力を目一杯働かせたとしても、たかだか知れていますからね。それに、私の想像は、この世界に反映させることができないのです」
「あなたが、ここの人だから?」
「そうです。とりあえず、今はそう理解してもらうのが一番いいでしょう」
マルカが含みありげな言い方をした。「私の想像によって出来る世界は、ここが消滅すると同時に滅んでしまいます。その世界は、ここを元に成っているからです。だから、この世界を救えるのは、もう一つ上の階層思念が必要なのです」
「ここは、私の世界よりも下の階層なの?」
世界に上や下の概念があるものなのかと、暖野は不思議に思った。
「あなたや、あなたの世界の他の人達の意識下という意味では」
暖野にはやはりよく解らなかった。それを察してか、マルカが続けて言う。「上や下というものは、世界に最初からあるものではないのです。例えば、星はノンノの上にありますが、下にもあるでしょう」
「星が? 下にですって?」
「よく考えてみて下さい」
マルカはその時間を与えるように黙った。
暖野は言われたとおりに考えてみた。