忘れられた大樹 後編
忘れられた大樹 後編
兄弟たちが暗闇の中で震えている、その間に、ハルを抱えた医者は、そのまま町の中の居住区にある小さな診療所に入っていった。
その診療所の医師に挨拶をし、ベッドを借りると、医者はそこにハルを寝かせた。
ハルは、ぎりぎりの意識を保ちながら、医者を見ては、森へ、森へ、と呟いていた。医者は、ハルのその様子を見守りながら、一度、その右腕をまっすぐ前に突き出し、開いた掌を握り締めて拳を作った。そして、ゆっくりと握った掌を開くと、そこには白い、楕円形の形をした錠剤が握られていた。 そして、病室にある水道から水を汲み、その水を使ってハルにそれを飲ませた。すると、今まで荒かったハルの吐息は整いはじめ、少しずつ体の熱も取れていった。落ち着いてくると同時に冷や汗も引き、緊張して力がこもっていた体中の力が静かに抜けていった。
「これで、毒は消えた。俺が分かるな、ハル」
意識を取り戻したハルは、静かに頷いた。
「はい。ここは一体どこでしょう。私は」
言いかけて、ハルは突然息を止めて呻いた。毒は引いたが、足の怪我はまだ治っていない。医者がハルの足の怪我を治療していたのだ。消毒用の薬や湿布が染みて、ハルは何度か声を上げた。
「あまり喋らない方がいい。それにしても、情けない姿だな」
血が止まるかというほどきつく包帯を締め、アースが苦笑しながらハルに言った。
「これでいい。すぐには歩けないから、に帰るのは一週間先に延ばしたほうがいい」
「そんなに!」
ハルは、驚きざまにベッドから跳ね上がった。
すると、とたんに傷に痛みが走って、一気に全身の力が抜けた。
「そんなに長い間、森を離れてはいられません。私は今、すぐにでも森に戻らなければ。彼らがすぐにでも森に押しかけてくるのです!」
「ああ、それなんだけど」
ハルの真剣な眼差しを受けて、医者はため息をつき、頭をポリポリと掻いた。
「もう、遅いだろうな」
「遅いって、どういうことですか?」
兄弟たちが暗闇の中で震えている、その間に、ハルを抱えた医者は、そのまま町の中の居住区にある小さな診療所に入っていった。
その診療所の医師に挨拶をし、ベッドを借りると、医者はそこにハルを寝かせた。
ハルは、ぎりぎりの意識を保ちながら、医者を見ては、森へ、森へ、と呟いていた。医者は、ハルのその様子を見守りながら、一度、その右腕をまっすぐ前に突き出し、開いた掌を握り締めて拳を作った。そして、ゆっくりと握った掌を開くと、そこには白い、楕円形の形をした錠剤が握られていた。 そして、病室にある水道から水を汲み、その水を使ってハルにそれを飲ませた。すると、今まで荒かったハルの吐息は整いはじめ、少しずつ体の熱も取れていった。落ち着いてくると同時に冷や汗も引き、緊張して力がこもっていた体中の力が静かに抜けていった。
「これで、毒は消えた。俺が分かるな、ハル」
意識を取り戻したハルは、静かに頷いた。
「はい。ここは一体どこでしょう。私は」
言いかけて、ハルは突然息を止めて呻いた。毒は引いたが、足の怪我はまだ治っていない。医者がハルの足の怪我を治療していたのだ。消毒用の薬や湿布が染みて、ハルは何度か声を上げた。
「あまり喋らない方がいい。それにしても、情けない姿だな」
血が止まるかというほどきつく包帯を締め、アースが苦笑しながらハルに言った。
「これでいい。すぐには歩けないから、に帰るのは一週間先に延ばしたほうがいい」
「そんなに!」
ハルは、驚きざまにベッドから跳ね上がった。
すると、とたんに傷に痛みが走って、一気に全身の力が抜けた。
「そんなに長い間、森を離れてはいられません。私は今、すぐにでも森に戻らなければ。彼らがすぐにでも森に押しかけてくるのです!」
「ああ、それなんだけど」
ハルの真剣な眼差しを受けて、医者はため息をつき、頭をポリポリと掻いた。
「もう、遅いだろうな」
「遅いって、どういうことですか?」
作品名:忘れられた大樹 後編 作家名:瑠璃 深月