太陽のはなびら
【第11章:咎、愛に包まれ】
薄暗いリビングを、シンは静かに歩く。
書斎のドアの下から、わずかに光が漏れているのが見える。
出会ってから、ほんの少ししか経っていないし、もうきっと会うこともないだろう。
寂しくないといえば嘘となる。
けれど、そういうものなんだと自分を納得させる。
これが、自分の人生なんだと。
受け入れないといけないものなんだと。
クッキーを食べながら、楽しく話したあのテーブルの上に、シンは先ほど書いた封筒を置く。
さあ、これで最後だ。
テーブルに背を向け、シンはドアに向かって歩を進める。
ドアノブに手を掛け、シンはゆっくりとドアを開けようと手を伸ばした。
が、手を掛けようとした瞬間、
背後からドサドサッという何かが崩れ落ちる音と、短い悲鳴が聞こえた。
音は書斎の方から聞こえてきた。シンとヒューイは顔を見合わせる。
一体何が起きたのか。
少ししてから、かすかにリュヴリュがシンに助けを求める声が聞こえてきた。
「どうします? 坊ちゃん」
ヒューイは意地悪くシンに聞く。
「どうするって、行くしかないよ」
書斎に向かおうとするシンを、ヒューイは制する。
「もし。坊ちゃんが今リュヴリュさんを助けに行けば、それによってまた面倒事を被るかもしれませんよ。それでもいいのですか?」
シンは、歩き出した。その方向は、ドアではなく、書斎だった。
「つくづく、坊ちゃんは悪人になれない人ですね」
ヒューイはやれやれとため息を一つつき、一言付け加える。
「でも、それでこそ私の主だ」