太陽のはなびら
【言葉の世界が紡ぐ言霊(5)】
シンは客室のベッドに寝そべり、ぼんやりと天井を眺めていた。
眠ってみようと目を閉じるが、眠れそうもない。
「なぜ、言ってしまったのですか?」
ヒューイがシンに尋ねる。心なしか、非難するような口調だった。
「解らないよ」
シンはぼんやりと答える。
「確かに、言わなければ、楽しいひとときで終わったかもしれない。彼女が望む、楽しい話を続ける事が出来たんだろうね」
「それなら、なぜ」
「彼女の瞳さ」
ヒューイの言葉をさえぎって、シンは言う。
「彼女の澄んだ瞳を見て話していたら、なんだか隠し事をしてはいけない気がしたんだ。したくなかったんだ」
澄みきった湖の様な、彼女の瞳は、まるで自分の内面まで写し出しているようだった。そんな瞳の前で、自分の保身のための隠し事はできなかった。
「あともうちょっと話していたら、あの手紙が嘘だってことも言ってしまいそうでさ。その代わりに自分の事を言ったんだ」
ヒューイはため息をついて、坊ちゃんは悪人にはなれませんねとつぶやいた。