太陽のはなびら
【君は大丈夫(3)】
ピリカからもらった袋の中を探り、村長からの手紙を取り出し、少女に見せる。
「さっきテーブルの上を見たら置き手紙があったんだ。ちょっと読んでみるね」
リュヴリュが頷くのを見て、シンは手紙を読み上げるふりをして、即興で話を作った。
―まず、はじめに謝らないといけないな。突然いなくなってすまない。
私はしばらくこの家を留守にしないといけなくなった。
甘えん坊のお前のことだから、きっと直に言うと私を引き留めるだろう。
だから、強引だが一服盛らせてもらった。
しばらく会うことができなくなるが、心配しないでいい。
いつか必ずお前に会いに来る。
それと、今目の前にお前を起こした人がいるだろう。
その人の話を聞きなさい。お前の力になってくれるだろう。
それじゃあ、いい子にしているんだよ。―
ちょっと強引だったか。シンは疑われないか不安になるが、
「よかった。私捨てられたんじゃないんだ」
リュヴリュが安心した様子でつぶやいたのを聞き、ほっと胸をなでおろした。
「そうさ。君は捨てられてなんかない。君、リュヴリュって呼ばれていたんだよね?」
「はい」
リュヴリュは頷く。
「名前にはそれぞれ意味があるんだ。君の名前、リュヴリュにも意味がある。なんて意味か知ってるかい?」
リュヴリュは首を横に振る。
「どういう意味なんですか?」
「ここら辺で使われていた古代語、ルシア語で、【愛する】って意味なんだ。そんな名前を持っている
君が捨てられるわけがない」
「【愛する】、ですか」
リュヴリュはシンの言葉を繰り返す。
「そう。だから今は落ち着いて、クッキーでも食べよう」
リュヴリュは笑顔でうなずき、クッキーをほおばり始めた。