太陽のはなびら
【第一章:あたたかな村(1)】
気の遠くなるような年月が経ち、栄華を極めた世界は、滅ぼうとしていた。それはまるで、大きくなりすぎた大木が、その身を支えられなくなって、生きながら朽ちていくような、ゆっくりとした、しかし着実な滅びであった。
極端に高度化した過去の技術は、それを扱える専門家が過去の戦争でほとんどが死に絶えた為に、知識を持つ、一握りの人間以外は扱えない物となってしまった。
人は、かつての高度文明社会を維持することはできなくなり、結果、小さな集落をいくつも作り上げ、身を寄せあうかのようにして、かろうじて生きながらえていた。
そんな世界に転々としている集落の一つ、深い森により沿う様にあるロコロ村に、今日もまた太陽が昇ってきた。朗らかな暖かさと、色めき立つ青々しい草々。虫たちは生き生きと短い生を謳歌している。
厳しい冬が終わり、待ち望んだ春が訪れたのだ。
ロコロ村の規模はさほど大きくない。しかし、周りに大きな集落があるために、商人が多く出入りする集落であった。商人を相手に宿や食料を提供することで、なんとかロコロ村は生き延びてきたのだ。
村人は人なつっこく友好的な人物が多い。特に村長は、客人をもてなすことの好きな気さくな人物で、村の内外問わず人気があった。ロコロ村の人達は、滅びゆく世界に絶望して自暴自棄になることもなく、斜に構えて皮肉を口にすることもなく、迫りくる世界の終わりのなか、愛する人のため、守りたい家族のため、心を許せる仲間のために、その日その日を精一杯生き続けていた。