FLASH BACK
内心、沙織にも独占欲というものがあって、恵美にも誰にも鷹緒をとられたくないという気持ちはあるのだが、先程の必死な形相の恵美を思い出せば、可哀想だとも思い、大人を装うように沙織はそう言った。
鷹緒は静かに頷くと、沙織に顔を近付ける。沙織もそれを受けるようにして、二人はキスをした。
「あ、そうだ。これも渡しそびれてたんだけどさ」
おもむろに鷹緒はそう言って、投げ出していたバッグの中から、小さめのカメラケースを差し出す。それは一見、カメラケースにも見えないほどのジュエリーが散りばめられた女性用のケースである。
「わあ。可愛い!」
「誕生日にやったカメラ、壊しそうで持ち歩くの怖いとか言ってただろ?」
「じゃあ、私をほったらかした罪滅ぼしじゃないの?」
「なんだよそれ。たった今買ったものじゃなくて、ちゃんと昼間に買ったんだよ」
沙織は嬉しそうにケースを開けて、家宝のようにしまっていた鷹緒からの誕生日プレゼントであるカメラを入れた。
「ぴったり」
「ああ」
「それにしても、こんな可愛いの選んじゃうセンスがあるんだ。なんか意外」
「残念だけど、店員一押しのものだよ。若い女性用って言ったら、勧められたんだ」
「なーんだ。でも嬉しい」
はしゃぐように一気に明るい笑顔になった沙織は、そっと鷹緒にキスをした。それがあまりにも唐突で、鷹緒は驚いて頬を赤く染める。
「おまえ、急になんだよ……」
「だって……お礼?」
「まったく、いつも唐突なやつだな……」
鷹緒は照れ笑いを隠すように、沙織の肩を抱く。
「ありがとう。大切にするね」
「そんな高いもんじゃないんだけどな」
「でも嬉しいから」
そっと頷きながら、鷹緒は真剣な顔で沙織を見つめ、そのままソファに押し倒した。
頬を赤く染めながら、沙織は鷹緒から目を逸らすことが出来ずに身を預ける。プレゼントは嬉しかったが、それがなくても鷹緒にこうして触れられるだけで嬉しいと思える。
幸せを噛みしめるように微笑む沙織に、鷹緒は癒されていた。
作品名:FLASH BACK 作家名:あいる.華音