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FLASH BACK

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 すっかり意気消沈した俊二に、鷹緒は苦笑して煙草を咥える。とはいえ、完全禁煙の社内では火も点けられない。
「じゃあ何。俺はおまえに何してやったらいいわけ? 来年のカレンダーの表紙がおまえの写真で飾られればプロポーズするってんなら、この場でこれシュレッダーにかけてもいいけど?」
 すでに自分の写真を破ろうとしている鷹緒に、俊二は口を曲げる。
「そんなの僕の勝ちにはならないじゃないですか。なんかこう……僕もやる時はやるんだぞっていうところを、彼女にも見せたかったんですけど……」
「ったく、新年早々、鬱陶しいやつだな……」
 そう言いながらも軽く微笑むと、鷹緒は鞄の中から封筒を出して、俊二に差し出した。
「……なんですか?」
「豪華ディナークルーズの招待券」
「え?」
「取引先からお年賀でもらったんだよ。沙織と行こうと思ってたけど、おまえにやるよ」
 それを聞いて、俊二は目を見開いた。
「い、いやいやいや! いいです。僕なんてそんなの似合わないし、沙織ちゃんにも悪いし……」
「べつに行きたきゃ自分で連れて行くし。一世一代の大勝負に招待券ってのもアレだけど、言わなきゃバレないし、時にはキメてやれよ」
「……いいんですか?」
「ああ。どうせ俺、そんなの連れて行ける時間ないし」
「あ……ありがとうございます!」
 やっと笑顔に戻った俊二を見て、鷹緒も安堵の溜息を漏らす。
「うまくいったら、呑み代奢れよ」
「はい、もちろん! あ、じゃあ……もしうまくいかなかったら奢ってくださいよ」
「ハハ。馬鹿言うなよ……でも、あんま背伸びすんなよ。だいたい牧はそういうタイプじゃないだろ」
 鷹緒のほうが牧と付き合いが長いため、俊二は一瞬、鷹緒に嫉妬した。しかしそれが無意味であることも理解して、静かに口を開く。
「……今度、人生相談乗ってください」
「相手間違えてない? そういうのは、成功したやつに聞けよ」
「僕は成功も失敗も、チャレンジすらしたことないんで」
 真剣な様子の俊二に、鷹緒は苦笑して立ち上がった。
「まあいいけど。あんま考えすぎて空回りしないようにしろよな」
 そのまま鷹緒は喫煙室へと向かっていく。俊二に言った言葉が、自分自身に跳ね返ってくるようだった。
「ほんと、人の人生相談なんて乗ってる場合じゃないんだけど……」
 そう言いながらも、俊二の勝負に少しわくわくした感覚もあり、鷹緒は喫煙室の椅子に座ると、外を眺めて微笑した。




作品名:FLASH BACK 作家名:あいる.華音