FLASH BACK
9. 今年もよろしく
カウントダウンが終わると同時に、鷹緒と沙織の携帯電話が同時に鳴った。あけおめメールというべきメールが、一斉に入ってくる。
律儀に返す沙織の横で、鷹緒は軽く溜息をつく。
「……二人でいる時くらい、メールやめない?」
そう言った鷹緒に、沙織が首を傾げた。
「年明けの今くらいいいじゃない。私は一緒にいる時も、いつも鷹緒さんの電話の最中とか待ってるよ?」
「それは仕事の……」
と言いかけて、鷹緒は苦笑する。
「そうだな。仕事もプライベートもないよな」
「鷹緒さんもメールすれば?」
「おまえへのメールも億劫なのに?」
「もう。年明けくらい、いつもと違うことしたっていいじゃない」
そんな会話をしながらも、沙織はメールを打つ手を止めない。
手持無沙汰の鷹緒は、自分へ来たメールを見ながら今年を振り返り、大切な人たちの顔を思い浮かべる。
やがてメールを打ち出した鷹緒に、沙織が横目で微笑んだ。
「メールする気になったの?」
「うん。大事な人だけに……」
「あ。ちょっと妬いちゃう」
「馬鹿言ってんなよ。でも、なくてはならない存在の人にね」
からかう沙織に苦笑しながらメールを打って、鷹緒は携帯電話をテーブルに置いた。
それと同時に、あなたにメールが届く。
あけましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いします。
今年があなたにとって、素敵な一年になりますように……。
よくあるようなたった数行のメッセージだったが、普段ほとんどしない鷹緒からのメールに、受け取ったあなたは、レアな感情を抱くことだろう。
どうぞ今年もよろしくお願いします。
作品名:FLASH BACK 作家名:あいる.華音