超短編小説 108物語集(継続中)
高見沢は『さかなや書店』のオカンとしばらくこのような会話を繰り返した。その挙げ句、薦められるままに四、五匹の魚、いや四、五冊の書籍を購入してしまった。
この出費に別段不満はない。むしろ探し求めていた宝物を手に入れたかのような思いがする。
今、高見沢はそれらを大事そうに小脇に抱え、食堂へとアーケード内をヨロヨロと這うように向かっている。
そしてその姿は、誰も見たことはないが、まるで『本の虫』に変身したかのようだった。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊