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超短編小説  108物語集(継続中)

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 粒径は0.4ミリメ−トル。そして、落下速度は秒速2メ−トル。無色透明のまま、それらは真っ暗な夜空より、さあ−さあ−と。微かな音とともに複雑に、交叉しながら落ちてくる。
 主成分は紛れもなく[H2O]、だがそこに微量の窒素を含ませて……。
 そんな天空からの、季節外れの落下物、それは晩夏の小夜時雨。無味無臭の性状のままで、その夜それが降っていた。

「ねえ、開けて」
 夜が更けて、力弱く……。君は突然に、ドアをコンコンと叩いて訪ねて来た。ドアチェーンを外し、僕はそっと開けてみる。すると君は緑の黒髪から爪先まで濡れていた。

「どうしたんだよ?」
「うーうん、ちょっとね」
 君はそう口ごもりながら、白い指先を震わせていた。

「風邪引くよ。まあ、入れよ」
 僕は君の冷えた身体が心配だった。だから、ポット一杯に湯を沸かし、インスタントのポタージュスープを入れた。君はふーふーとそれを口にして、そのマグカップをじっと握りしめていた。