超短編小説 108物語集(継続中)
私は腰が抜けました。
それを見てアネ心は「時空貫通カプセルよ、1万光年先のニワニワ星から今貴方のために到着したのです」となぜか意味ありげに見つめてくるじゃありませんか。
しかし突飛過ぎ!
それでも私は気を静め、「光で1万年の距離を飛んできたって、どいうこと?」と訊きました。
するとアネ心はまるで成績オール5の姉のような表情で、「弟よ熟考したまえ、空間は貫けます。ここに長さ10mの帯があるとする、それを巻くことにより端と端の距離は3cmになるでしょうが、宇宙空間も一緒、帯のように巻き上げて、厚み方向に時空カプセルで貫けば、ニワニワ星からでもすぐよ」と教えてくれました。
「そうなんだ」と私は単純に納得。
そんな時に観光客がカプセルから降りてきたのです。
しかしお嬢さんたちばかりで、ちょっと変。私が首を傾げてると、アネ心が娘たちに向かって、「婿探しご苦労様です。今日は野暮ったい地球の男一人で、ごめんなさいね。だけど得意技はあなた様への滅私奉公、お勧めだよ」と。
え、えっ、どういうこっちゃ?
思考はカオス状態に。
そんな時に、アネ心が「彼女いない歴ウン十年の弟君にはそこのしっかりさん、ヨメ心さんがお薦めね、さっ、地球を捨て、カプセルに乗ってニワニワ星に婿養子に…行っちゃいな」と私の背中をドンと押しました。
それにしても恐ろしいことですね、男のハズミとは。
ヨメ心さんが割にかわい子ちゃんだったもので、カプセルに乗っちゃいましたがな。
今はニワニワ星に向けて銀河を貫通中です。
そして気付きました、これが七不思議の庭・けったい園の神隠しだ、と。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊