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超短編小説  108物語集(継続中)

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 深海航平は東京オリンピックの2020年におもちゃメーカーに入社した。その後上司に恵まれたこともあって、順風満帆で10年が経過した。今は商品企画部の中堅どころだ。

 しかし世の常、ある日突然波瀾万丈となる。
 部下思いで、赤提灯やゴルフに誘ってくれたオヤッサン上司に、突然の転勤命令が。理由は、いつも妥協だらけの新企画、とにかくゆるい。
 企画部は明らかに活力が喪失している、まるで疲弊した町内会だ。会社発展のためにはこの風土を打ち砕く必要がある。そのいの一番は上位役職者を入れ替えること。
 これが社長からの人事刷新の弁。
 と言われても和気靄靄職場、居心地が良かった。まことに名残惜しい。

 だが時は待たない、送別会の翌朝に、
「社長からの直々の依頼により、上司派遣会社よりやって参りました銀豹魔子(ぎんぴょうまこ)です。ただ今よりこの部のトップとして、皆さんを指導指揮致します」
 黒縁眼鏡にヴィクトリア・ベッカムのビジネス・スーツをビシッときめた長身の、いかにも知的で隙のない面持ちの女性が全員の前できりりと直立し、自己紹介をした。
 そして白くて長い指で眼鏡を外し、「覚悟せよ。私は君たちにハードワークを求めます。よって、その前に言っておきたいことがあれば、今どうぞ」と眼光鋭く個々を睨み付けて行く。