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超短編小説  108物語集(継続中)

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 朝の通勤電車、駅に到着すると同時にサラリーマンたちが押し合いへし合い乗り込んで来る。結果、この6両目の後方部もすし詰め状態だ。

 しかし、ここは異常なほど静か。
 なぜ?
 例えば部長クラスと思われる中年男性、席に座り、目を閉じたまま身動き一つしない。きっと新企画を練ってるのだろう。
 その隣ではいかにも営業スタッフ風な女性が、接待疲れか太ももまで露わにし、爆睡中。
 その前ではくたびれたスーツを着た三流サラリーマンがつり革にぶら下がりながらうとうとと夢の中。立ったまま寝るなんて、世の中には器用なヤツがいるものだ。

 その奥では連結部のドアに持たれ、新入社員らしき若造がゲームに熱中している。
 などなど、つまりここに集いし者たちは通勤地獄内で自分の居場所を探し、この6両目後方に辿り着いた。
 互いに顔は見知ってる。
 だがどこの誰兵衛とは知らない。それでも同じ閉ざされた空間で同じ朝の時を刻む縁となった。