超短編小説 108物語集(継続中)
アーティスト・花嵐風月(はなあらしふうげつ)のマネージャー・金橋夕子(かなはしゆうこ)は花嵐居住のマンション内で頚動脈をかっ切られ――失血死。
ネットニュースの書き出しはセンセーショナルだった。そしてあとを続ける。
駐車場に入庫した住人が柱の陰に倒れる女性を発見した。
辺りは血の海。110番があり、急遽捜査本部が立ち上げられた。被害者は金橋夕子、午前1時頃に殺害された。
天は二物を与えず。されど花嵐風月には4つジーニアスが授けられた。その証拠に4つの異分野、つまり小説家/画家/書道家/クラシックギターリストの道を究める才媛として知られている。
しかし、天才は一夜にして生まれる訳ではない。出生不明の幼い風月を引き取り、ここまで献身的にサポートしてきた金橋がいたからこそだと言える。
こんな女神を犯人はいかなる動機で殺害したのだろうか?
取材先から急遽戻った花嵐風月が遺体に泣き崩れたのも当然だ。
また当局からの第一報によると、高級マンションのセキュリティーは高感度の防犯カメラが随所に配置されており、万全。それらの映像によると、不審者の敷地内への出入りはなく、犯人は事件以前からマンション内にいて、今も留まっていると推察される。
したがって犯人逮捕は時間の問題だと言える。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊