超短編小説 108物語集(継続中)
「極悪人を褒めるな!」
ここまで耳を傾けていた百目鬼は部下を一喝した。
あとは「次郎の積年の五つの『み』、そえらを洗い落とし、次に目論んでいたる五つの『い』は可奈を罪人に仕立て上げて、独り占め。つまり六つ目の『い』、一郎からの相続金が欲し『い』だったんだよ」と口を挟む。
「あら、オヤジ的新説の『い』だわ」と芹凛がプッと吹き出すが、百目鬼は「さっ、五つみ地蔵を崇める次郎に、この推理を叩き付けに行くぞ」と鬼の目をギョロッと剥く。
これに芹凛は「一郎を殴り殺した可奈の方が先じゃないですか!」と軽く返してしまう。
しかし、芹凛はハッと気付く。
あとは「あの激切な打撲痕は、可奈ではなく、次郎の仕業ってことですね」とブツクサ言いながら、雨の中へと走り出してしまった上司を追い掛けるのだった。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊