超短編小説 108物語集(継続中)
それでも1時間後に、芹凛が熱いコーヒーを百目鬼のデスクにどんと置いた。百目鬼にはわかる、芹凛が推理を組み立て終えたのだ。話してみろと目配せすると、芹凛は頬を染めて…。
「happysachikoのフォロワーの中に、ダンナと道ならぬ恋に破れた女がいます。もちろん部長夫人はそれに気付いていて、これでもかこれでもかとダンナとの幸せフォトを載せ、当て付けしてたようです。これに失恋女は我慢出来なくなり、月初めにhappysachikoが御来光に願を掛けに行くのを写真で知り、ここぞと犯行に及んだのではないでしょうか。犯人は、happysachikoに最近『Good bye my love in deepest sympathy.』とコメントした女です」
こう言い切った芹凛が、断崖に立ち、自撮りされた女性の写真を示す。百目鬼はその画面を見て、鬼の目をギョロッと剥いて天に向かって吠えるのだった。
「これは結愛(ゆうあい)という女性、聞き込みから割り出し、行方を追っていたところだ。残酷なことだが、失恋は時に死の連鎖を生む。さっ、芹凛、急がなければ!」
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊