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超短編小説  108物語集(継続中)

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 紅葉狩りの疲れでしょう、熟睡でき、目覚めの良い朝でした。私は清々しい気分で起き、キッチンへと入って行きました。
 すると、なぜか10年前に他界した母が朝食にブリトーを作っているではありませんか。

 不思議でした。
 だけど、まっえっかと、「おはよう」と声を掛けますと、母は「イザベラを散歩に連れてって、これ後始末用よ」と真新しいプラスチック袋を渡してきました。私はそれを受け取り、「お母さん、行って参ります」と返しました。

 しかし、母は意外なことを言ったのです。
「あなた、何勘違いしてんのよ、私は貴方の妻よ」ってね。
 これにはおったまげましたぜ。私にはカミさんがいたのですね。

 それにしても、こんな大事なことを忘れてしまっていたなんて、まさに一生の不覚です。ここは「すまない、結菜」と深々と頭を下げました。

 するとどうでしょうか、たった今配偶者だと宣言なされたご婦人が私の頭をバシッと叩いて、「結菜は私たちの娘よ。私は智子、昨日一緒に紅葉狩りに行ったでしょ」と実に力強く仰られたのです。

 てな具合に、年を食うって、ホント嫌なことですね。一番愛してる妻のことが…、曖昧模糊になるのですから。
 だけど皆さん、こんなに曖昧になっても、一つだけ良いことがあるのですよ。

 それは時代時代を共に生き、また教えられ、遅まきながらも感謝申し上げたい人たちと再会できる、ってことでしょうかね。