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超短編小説  108物語集(継続中)

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 実家の草刈りに取り掛かり、10分も経っていない。それなのにガーガーと回転する刃を止め、一郎はよっこらせと庭石に腰掛けた。
 それからだ、いかにも自虐的に「2メートル進んで、もうクタクタ。俺は根性なしだ」と吐き、ペットボトルの茶をゴクゴクと飲む。

 それにしてもこの現実をあらためて直視すれば、この空き家で何年も草と戦ってきた。だが雑草はお構いなしに生えてくる。そしてヤツらは勢いよく伸び続け、やがて大地を牛耳る。
 その前に刈ってしまわなければ、辺りは廃墟と化す。それを阻止するため、一郎は草刈り機を武器にせめぎ合ってきた。

 しかし、たとえ完璧なまでに刈り込んだとしても、決してその勝利に酔えるものではない。その理由の一つは、生命力の強い雑草には決して勝てないという諦めがある。
 二つ目は、それ以上に、草刈りは――田舎を捨て、町の暮らしを選択した子孫、一郎への先祖からの面当て、いや容赦しない労役だ、と捻れた思いに心を腐食されてしまっているからだ。