超短編小説 108物語集(継続中)
那覇空港のターミナルビルの外へと出ると、本土は冬だというのに、いきなりムッとした熱気が襲ってきました。見上げると、紺碧の空に白い雲がモコモコと立ち上がってます。
ああ、ここは夏だ、と再認識した時です、「直樹、こっちだよ!」と、駐留米軍からの払い下げなのでしょうか、ブルブルと車体を震わす旧型4WD車、その運転席から浩二が手を振ってきました。
私は駆け寄り、キャリーバッグを後部座席へと放り投げ、思い切りシートが破れた助手席に乗り込みました。それから恩着せがましく、「鯛焼き、たくさん買って来てやったぞ」と言ってやりました。
だが友人はこの嫌みを無視し、ガタゴトと発進させました。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊