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超短編小説  108物語集(継続中)

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 以前課長から、この企画のチーフはお前しか出来ない、だからやってくれ、と頼まれたことがあったんだよ。
 こんなの見え見えだよな、本来なら課長が率先垂範して進めなきゃならないプロジェクトだぜ。だけど失敗するかもとビビったのだろう、俺に押し付けてきたんだよ。俺は「どうでもなれ、へへへ」と笑い、あとは武士の情けで、「光栄のドンツキです」と罠に嵌まってやったんだ。

 ところが豈図らんや、弟知らず、成果が出てしまってさ。これで課長は得意のハシゴ外しを中止し、部長に「私の強力指導の結果です」って報告したんだよ。
 俺、蹴飛ばしてやろうかと思ったけど、「すべて課長のリーダーシップのお陰です」とここは譲ってやったよ。
 すると部長は、課長に向かって真顔となり、「君のような優秀な人材をこんな小さな部に閉じ込めておくのはもったいない。部長待遇で、大きな部署の責任者になって欲しい」と。

 課長にとってこれは嬉しいオファー、出世階段をまた一つ昇れるとニコリとし、「謹んでお受けします」とクイックレス。これに部長は間髪入れず、「常夏国の現地責任者として、帰国は永遠にないと覚悟し、向こうで骨を埋めてくれ」と堅い握手をされたんだよ。

 オッオー、これぞ後黒河(ごくろかわ)法王部長の十八番、位打ちだぞ。すなわち自分のポジションを脅かす部下に、高い役職を与えて浮かれさせ、破滅させてしまうという…平安朝の伝統罠だ。
 だいたい常夏国で業績なんて上がるわけないわな、と俺はショック死しそうな課長に祝辞を献上してやったぜ。
「夏、夏、常夏、ココナッツ、お祝い申し上げます。何かあれば、遊びに行きマンゴー」
 一方課長は半泣きで、独りごちりはりました、――「ハ・メ・ラ・レ・タ」と。

 事ほど左様に、我が職場はサラリーマンの小さな野望と大きな憎悪が絡み合う戦場、罠々バトルフィールドだ。
 だけど、これが…いとをかし…なんだよな。