超短編小説 108物語集(継続中)
「おいおい、書いてくれるじゃないか、実にオモレー!」
急遽本事件に駆り出され、現場検証から戻った百目鬼刑事、デスクに置かれた夕刊紙を一読し、ププと吹き出してる。
「刑事、不謹慎ですよ。私たちはこの不可解な事件の解決を任されたのですから」
部下の芹凛(せりりん)こと芹川凛子刑事が妖魔の形相で睨み付けてくる。
確かにその通りだ。
百目鬼の長年の勘からすれば、この事件は色恋沙汰よりもっと深い闇がありそうだ。そんな疑念を芹凛も持っているのか、オヤジに負けじと…
「彼らのオフィスは15階ですよね、なぜそこには止まらないエレベーター内で殺人事件は起こったのでしょうか? いえ、互いに殺し合った、もしそのように偽装した犯人がいたとしたら、それは15階で犯行は行われなかったと強調したかったのでは」
なかなかの読みだ。百目鬼はしばらく沈思黙考、といえば格好良いが、芹凛が「寝てるのですか?」と声を掛けると、おっと目を開き、いきなり指示を放つ。
「俺は二流だからよくわかるんだ。花形と青夜のような一流に出くわすとムカッとくるんだよ。そう、俺のように、僻みっぽいヤツが身辺にいないか、当たってみよう」
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊