超短編小説 108物語集(継続中)
駿(すぐる)は長い一日の業務を終え、オフィスを出た。すでに12時半、今から走れば終電に間に合う。しかし、そのエネルギーは残っていない。
「今夜はホテルに泊まるから」 妻の夏希に連絡を入れた。
こんなことはよくあること、夏希は「あら、そうなの」と返し、「明日は帰ってきてよ、由佳の学校のことで相談したいから」と必要時のみの出番を要請する。
駿には二人の娘がいる。長女は来年中学、私立に入れようと妻は目論んでる。安い給料、それでも子供の教育に一所懸命な夏希、そのやり繰りの苦労がわかるため「出来るだけ早く帰ります」と電話を切った。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊