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超短編小説  108物語集(継続中)

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 資産家の亮介の死から一週間が経過した。新たな情報も得たが、特段の進展は見られない。それを打ち破るかのように、百目鬼が唐突に質問を発した。
「3人の夫を殺した。そして今回、青酸カリ入りカプセルを亮介に飲ませ、毒殺した。こう仮説を立てるならば、この女には強い動機があったはず。芹凛、それは何だと思う?」と。

 こんなオヤジデカからのぶっきら棒な問い掛けに、芹凛は驚く風もなく、「お金でしょ。和花はハワイに移住し、残りの人生を満喫するつもりだったのよ」と調査票を指し示した。
 ホッホーと頷く百目鬼、だが「なぜハワイなんだ?」と突っ込んでみる。芹凛はそんじょそこらの柔な女刑事ではない。負けじと、考えをまとめて……、
「孤児院で育った和花、彼女には別の孤児院へと引き離された双子の、洋花(ようか)という妹がいました。そして二人は10年前に再会し、洋花は自分が住むハワイで一緒に暮らそうと姉を誘った。そこで先立つものはお金、和花は夢実現のため、死亡保険金を貯めることを思い立ったのよ」と言い切った。
 しかし、「和花のアリバイはまだ崩せてないわ」と自信のない表情をする。

 これを見て取った百戦錬磨の百目鬼刑事、「冷凍庫に一杯オトトがね」とヒントを与える。すると芹凛はポンと手を打ち、あとはもう止まらない。
「和花は夫を水曜日に殺害し、酸化と乾燥防止のため死体全体をラップした。それから冷凍魚と一緒に水の浴槽に入れ、水温零度で保存し、死亡推定時刻を金曜の夜まで伸ばしたのだわ」
 これで殺人時刻のトリックは解明された。