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超短編小説  108物語集(継続中)

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 百目鬼は知っている。なぜなら署を出る前に、部下の芹凛こと芹川凛子刑事と和花についてブリーフィングを終えていたからだ。

 そして、その内容とは……、
 和花は資産家の亮介と今流行りのシニア向け婚活サークルで知り合い、一年前に結婚した。亮介はバツイチ、それに比べ和花は3人の夫と死別し、今回は4回目の結婚となる。当然和花には多額の保険金が今まで支払われている。
 そして、そこには犯罪の臭いがある。

 一人目は毒キノコ中毒死。二人目は崖からの転落死。三人目は煉炭自殺。いずれも証拠不十分、かつ和花のアリバイが崩せず立件できなかった。
 こんな経緯があり、今回百目鬼に白羽の矢が立った。早速これに応じ、急ぎ現場へと駆けつけた。
 そこには淡い江戸紫の和服を着こなし、死人の横で楚々(そそ)とたたずむ和花がいた。場には同情をそそる雰囲気があった。だが百目鬼と芹凛は実直に現場検証を遂行していった。
 結果は、まず青酸化合物により毒殺された亮介が床の間近くに横たわっていた。
 死に際に藻掻いたのか、掛け軸は床に転がり、一輪挿しの紅い椿が落ちていた。

「死亡推定時刻、つまりご主人が殺害されたのは約60時間前、金曜日の深夜となります。その時、奥様はどちらにおられましたか?」
 百目鬼は歯に衣を着せず直に訊くと、婦人は面を上げ、「この家は住みづらく、普段私はマンションで暮らしてます。金曜の夜もそこにずっといました。なんなら防犯カメラがありますから、お調べ下さい」と答え、フフと不敵な笑みを浮かべたような気がする。もちろん百目鬼はそれを見逃さなかった。

 その後、二人は屋敷内を精査した。特に荒らされた様子はない。だが納屋に大きな冷凍庫があり、中に鯛や鰤などの大型魚が溢れるほど冷凍されていた。和花にその理由を尋ねると、亮介の趣味は海釣り、その釣果だと。
 また風呂場は現代風に改造され、大きな浴槽が備わっていた。和花の弁によると、結婚に当たって改造してもらったということだ。

 一方隣人からは、金曜の夜に家に入っていく人影を見たという目撃証言を得た。この人物こそ重要参考人。しかし、その後の足取りは掴めなかった。