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超短編小説  108物語集(継続中)

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 私は浩二のことはよく知ってました。
 だいたいこいつは新たな未確認生物、その標的をセットし直すと、目をキラキラと、いやギラギラとさせるのだと。
「それで、今は何を追っかけてんだよ?」
 私は気を利かして訊いてやりました。
 絶対浩二は喋りたかったのでしょうね。それから堰を切ったように、奇々怪々なことを、というか、ちょっと滑稽な話しを始めたのです。

「直樹、よーく聞いてくれよ。まだ確認されてないんだけど、確かにいるんだよなあ、猫が」
「猫? 猫ってニャオを鳴く猫だろ。そんなのそこら中にいるじゃん。それともイリオモテヤマネコでも?」
 私がわけがわからず聞き返すと、浩二はもったい付けて小声で囁くのです。
「そんなのじゃないよ。それは――パンダ猫だよ」

「パンダ猫?」
 私は意外で、大声を発してしまいました。すると浩二がシーッと人差し指を口にあて、「色は匂へど散りぬるを我が世誰ぞ常ならむ有為の奥山今日越えて浅き夢みじ酔ひもせず」と風流っぽくひとくさり唱えて、それからですよ、浩二の講釈が始まったのは。