超短編小説 108物語集(継続中)
ひょんな拍子で、あなたがもし幽霊バスに乗ってしまったら、その後の人生は一体どうなるのでしょうか?
じとっとした空気が肌に纏わり付き、生暖かい。だが背筋に悪寒を感じる。そんな陰鬱な夜に、幽霊バスはあなたの目の前に現れる。
昭和時代を彷彿させる箱形で、くすんだ橙色のボディに緑のラインが伸びる。とにかく気分が悪くなる色合いだ。その上バンパーがへこみ、車体のあちこちに錆が浮き上がってる。
誰が取り付けたのか、運転席横に立てられた竹竿に白い吹き流しが。だが、たなびいていない。これからしてスピードはかなり遅そう。
そんな幽霊バスがヘッドライトからぼやけた光を放ち、ゆらゆらと車体を揺らしながらゆっくりとやってくる。
あっ、赤信号。右からトラックが、ぶつかる!
摩訶不思議、トラックは幽霊バスの車体をスルッと通り抜け、さっさと走り去った。どうも幽霊バスって、実体があるようで、ないのかも知れない。
ならばバンパーのへこみはどうして出来たのだろうか?
多分、魔神山に捨てられてたすでにボコボコのバスを、幽霊たちが使い出したのだろう。
兎にも角にも、もはや幽霊バスに交通事故は起こらない。そのせいか一旦停止もせず、勝手気ままに走ってくる。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊