超短編小説 108物語集(継続中)
早速この供述の裏は取られた。確かにその通りで、これにより古都のアリバイが成立した。
しかし、百目鬼はどうも収まりが悪い。デスクで腕を組んだまま微動だにしない。部下の芹凛こと芹川凛子刑事も頭を抱えてる。
だが、これでは埒があかず、芹凛が百目鬼の顔を覗き込む。その瞬間、百目鬼はカッと目を見開き、「単独犯でないと仮定し、走行中の高速道路から京都のホテルに行く方法はないか調べてくれ」と。芹凛はオヤジの意図が理解でき、あとは黙々とネット内で検索するのだった。
「コーヒーでも入れましょか?」
一時間後芹凛が席を立った。百目鬼はわかってる、芹凛が推理を組み立て終えたのだと。コーヒーを受け取りながら「お嬢、話してくれ」と促すと、芹凛は辻褄を崩さないよう慎重に語り始める。
犯行は――古都と幇助者A/Bの計3人。そして車は2台。
つまり古都は愛車で、A/Bは車Xで、静岡サービスエリアで合流した。
古都はAにキーを渡し、歩いて隣接のパークへと抜け、タクシーで新幹線静岡駅へと向かう。
それから17時11分発のひかりに乗車し、18時47分に京都駅に到着した。そこからホテルへと向かい、20時過ぎにミライを毒殺した。
一方古都に変装したAは古都の愛車を運転し、途中のサービスエリアで目撃者を作りながら西へと。
またBは車Xで、Aが運転する古都の愛車と併走した。
そして2台の車は大津の手前の瀬田東よりバイパスを通り、京都の先の名神大山崎へと。ここで下り線から名神上り線へと乗り移ることが可能で、これを実行。
古都はミライを殺害後ホテルから出て、名神上りのバスストップへと行き、指定していた時間に入って来た愛車に戻る。この時、古都の愛車を運転して来たAは、Bが運転して来た車Xへと乗り換える。これにより静岡サービスエリアでの元の配車状態に戻る。
その後、古都は1人運転し、大津でまるで東から来たように高速から下りた。またAとBは車Xで東へと去って行った。
これにより古都がずっと高速道路を1人ドライブして来たことが偽装され、ミライの殺害現場には絶対行けないアリバイを作った。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊