超短編小説 108物語集(継続中)
急遽担当となった百目鬼刑事、現場から戻ってきて、昔取った杵柄のように、「How does it feel. Like a rolling stone?」としゃがれ声で口ずさんでる。
これを耳にした部下の芹凛こと芹川凛子刑事、「大丈夫ですか?」とちょっと心配だ。
だが百目鬼はそれを無視し、「江黒への憎悪に燃える者たちが、もし三人寄ればだが……、放火し、火事から逃げる真九を捕まえて、トランク内の女性と共に車で転落死させる。さらに江黒の妻の首吊り自殺偽装も――可能! この一連の犯行は計画的になされたのだろう」と。
こんな百目鬼の推理に合理性を感じた芹凛、あとは敬意を表するしかない。そのせいもあったのか、即座に動物的勘でリアクションする。「きっとその三人はネット内で知り合ったのよ」と。
ネット?
百目鬼はこの分野が不得手だ。「調べてくれ」と頼むしかない。
これに芹凛は目をぎらつかせて言い放つのだ。「次は江黒が殺される番ね。その前に解決してしまいましょ」と。
芹凛が前のめってる。そんな部下に、百目鬼は少し息を整い直して、静かに語り掛ける。
「これは俺の勘だが、とんでもなく憎いヤツがいるとする。そいつを追い込んで、最後に『Like a rolling stone?』、今は転がる石のようですか? って訊いてみたいよな。犯人は江黒の人生を破滅させ、その生き地獄を高見の見物するつもりなんだよ。さあ芹凛、この事件の解決は手こずるぞ」
この燻し銀のオヤジの言葉に、芹凛は余計に身震いし、本音をポロリと漏らすのだった。
「だけど、面白そう、だわ」
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊